<前編のあらすじ>

井口涼子さん(44歳・仮名)はメーカー勤務で営業職として働いています。独身生活を満喫しており生涯結婚はしないと考えていました。しかしあるとき、田沢博さん(46歳・仮名)と出会って交際を始めたことが大きな転機に。次第に結婚を意識するようになりました。

しかし、ネックだったのは名字の変更です。営業職の涼子さんは名字を変更することの仕事への影響が大きすぎることに悩んでいました。そこで博さんは自分が名字を変えることを提案します。

しかし、ふたりの結婚に立ちはだかったのは、博さんの両親。「なぜうちが名字を変えなきゃいかんのだ!」と猛反対されてしまいます。

●前編:【結婚直前のカップルが「男性側の名字変更」を決断…その時突き付けられた「厳しすぎる現実」】

事実婚を選択したふたり

博さんのご両親の猛反対によって、一度は結婚をあきらめかけたふたりでしたが、友人から「事実婚ならどちらも名字を変えずに済む」と聞き、さっそく博さんの自宅で同居を始めました。

事実婚は、「婚姻届は出していないが、事実上は夫婦と同じような関係性を持ち同居している」状態のこと。確かにこれなら、涼子さんが気になっていた仕事への影響も出ずに済みます。

ただ、事実婚は法律婚ではないため、ときと場合によっては家族とは認められないことが最大のデメリット。たとえば、急病や事故で病院に搬送された際、ごく近い親族しか面会できなかったり、入院や手術のときに立ち会えなかったりと、大切な人の緊急事態に関われない可能性があります。

また、保険の見直しの際も、事実婚では死亡保険金の受取人や、「指定代理請求人(被保険者が特別な事情により保険金・給付金等を請求できないときに、被保険者に代わって保険金・給付金等を請求できる人)」として指定することは難しいでしょう。

そこで、筆者は対策の1つとして、「婚姻届」ではなく「住民異動届」を提出してはどうかと提案しました。世帯主をどちらかに決める必要はありますが、住民票に「妻(未届)」または「夫(未届)」と記載することで、ふたりの関係や事実婚の期間を公的に証明できます。

「いいアイデア!」と喜んだ涼子さんでしたが、一方、博さんは全く予想外の反応を見せました。