行き着いた衝撃の結末。その原因は?

博さんの決断は、なんと「友達に戻ろう」。驚く涼子さんに、「君はワガママだ」と告げ、いきなり帰り支度を始めたのです。

いつも穏やかな博さんが怒った理由は、結婚して名字を変えることを涼子さんが「負け」だと主張したことでした。

「あなたを大切に思うから、両親の反対を押し切ってでも名字を変えようと思ったのに、そんな僕の気持ちも負けになるの?」

「なんでもひとりで勝手に決めて。結論だけ押し付けてくるのはワガママでしかない!」

そう冷静に、しかしとても強い口調で言い放ったのです。そして、言うだけ言ったらスッキリしたらしく、帰るときにはいつもの穏やかな表情に戻っていました。

夫婦別姓を求めることは当然の権利だと信じていた涼子さん。「選択的夫婦別姓(夫婦のどちらも姓を変えずに、結婚する前の姓を名乗ることを選べる)」を求めて、国を相手にした裁判が行われていることもあって、「いま結婚したら負けだ。いつかは希望が通る。それまでは事実婚でいよう!」と考えていました。ただ、博さんにちゃんと説明しなかったことは悪かったかもしれない。

「残念だけど……。でも、それがワガママだと言われるなら仕方ないですね」

めったにないことですが、博さんと涼子さんのように個別相談の席で言い合いをしてしまう方がいます。「どちらが正しいかジャッジしてください!」と言われることもありますが、ほとんどの場合どちらも間違っていません。だから、目の前で繰り広げられる論争には、できる限り口出しすることは避け、クールダウンできるように心がけています。

別れを選択したふたりのその後

しばらくして涼子さんから、「また、実家や友人に愚痴をこぼす生活に戻っちゃいました~」と連絡がありました。

今回のことで、自分の圧の強さに気づいたとのこと。「仕事で必要な部分ではあるけれど、私生活まで強気で押し通しちゃいけないよね」と反省しきりです。博さんとはどうするの? と尋ねると、「向こうが友達に戻ろうと言っていたので、時間をおいて何事もなかったように連絡してみます」と笑っていました。

何十年と一緒に生活している家族とだって、意見の相違はあるものです。事実婚であろうとなかろうと、ふたりの関係に良い着地点が見つかることを願っています。