苦学生だった夫

中国地方在住の鳥羽公恵さん(仮名・30代)は、大学2年の頃に交際が始まった同級生と、社会に出て3年後に結婚した。

夫は1年浪人していたため鳥羽さんより1歳年上。奨学金とアルバイトで学費を賄う苦学生だった夫を、比較的裕福な家庭で育った鳥羽さんは尊敬していた。

結婚してからも共働きだった鳥羽さん夫婦は、お互い不規則な仕事なので、時間があるほうが家事をやるということにし、特に分担しなくてもうまくいっていた。お金に関しても、自分で稼いだお金は自分で使い、貯金も各自で自由にしていた。ただ、家のお金として、「お互いに10万円ずつ、夫が管理する口座に入れる」というルールだけ決めていた。

妊娠発覚後の暗雲

やがて結婚から約1年後、鳥羽さんが妊娠。夫は喜んだ。

ところが鳥羽さんが産休に入る前のこと。医療系の仕事をしていた鳥羽さんは、非正規雇用であるため、産休・育休時に手当はない。そのため、「産休に入ったら、家にお金は入れなくていい?」と鳥羽さんが尋ねると、「貯金から出せばいいじゃん」と平然と答える夫。驚いた鳥羽さんが食い下がる。

「いつまでそうなるの? 私、車の維持費なんかも自分で払ってるんだよ?」

鳥羽さん夫婦が暮らす地域は車がないと不便なため、各自1台ずつ所有していた。

夫は少し考えたあと言った。

「俺の貯金がお前を上回るまで」

鳥羽さんは絶句したあと、泣き出してしまう。

「まるで『俺が優位に立つためにお前の貯金を減らす』って言われているようで、思いやりがなさすぎて悲しくなりました……」

その後、鳥羽さんは何とか交渉し、産休・育休の間、家に入れるお金は夫は15万円、鳥羽さんは5万円にしてもらうことができた。だが、収入がない期間中も、自分が使う車の維持費や保険料、税金などは自分の貯金から払っていたため、収支はマイナス。

「夫の収入はその当時、額面で1000万以上ありましたが、夫は学生時代まで我慢してた分、自分はお金遣いが荒くて……。出産準備はほとんど私のポケットマネーでした……」