<前編のあらすじ>
小林さんは東京都内に住むフリーター。月収22万円で手取りは18万円。家賃の7万円を引くと、残りは11万円程度。生活費に余裕があるわけではなく、昨今の物価高でどんなに節約をしても家計は火の車の状態だった。
そんな小林さんのもとに、住んでいる物件の管理会社から1通の封書が届く。中身はなんと家賃の値上げ通知。次回の契約更新時より家賃を2万円も値上げするのだという。
困惑する小林さんは、行政書士であり宅地建物取引士である筆者のもとへ相談に訪れた。小林さんの主張は「一方的な通知による値上げはおかしい」というものだったが、今回の値上げは法的に何の問題もないというのが現状だった。
●前編:【「おかしくないですか?」物価高で生活苦にあえぐ中 “家賃増額”を通知されたフリーター男性の嘆き】
借り手に残された対抗策とは?
家賃の増額の通知は貸し手側から一方的に行えて、借り手側への到達によってその効果が生じる。この点は確かだ。
しかし、借り手側に何も対抗策が残されていないわけではない。なんと、借り手側は貸し手側からの増額請求をはねのけられるわけだ。ただ、はねのけたからといって直ちに増額請求が否定されるわけではない。
具体的に言うと、「合意が成立するまでは従前の家賃を払い続ければよい」という結論が導かれる。つまり、2万円の値上げ請求が届いた小林さんはそれに納得できないとして従前の家賃額として7万円を4月からも支払い続ければよいのだ。
ただし、値上げに納得ができないからといって一切家賃を支払わない行為はNGだ。それは単に家賃の滞納となってしまう。
私は小林さんに対し、「増額は拒める。そして従前の家賃を払い続けることが必要だ」ということを伝えた。すると小林さんは「安心しました」と安堵した様子で、その日の会合は終焉(しゅうえん)した。