17歳の家出
百合子はリビングで夏織にお茶を出した。しかし事情を聞き出そうにも夏織はだんまりで、しびれを切らした百合子はそれとなくリビングを離れ、寝室で妹の有希に電話をかけた。
事情を聞いた有希は、電話越しでため息をついていた。
「あー、姉さんのところに行ってたか」
「行ってたか、じゃないわよ」
「やけに部屋が静かだなと思ってたけど、まさか家出していたとは……」
「家出って……何があったのよ」
「いや、実はさ、昨日、大げんかしちゃって」
けんかの内容は夏織が勉強もせずに家でダラダラしてたからだという。
来年には受験を控えているにもかかわらず、焦っている様子の見えない夏織に有希が注意をしたことで、大げんかに発展したとのこと。
「どうしてあんたらのけんかに巻き込まれないといけないのよ」
「ゴメンねぇ。何とかこっちから連絡はしてみるけど、あれはなかなか頑固だからね。本人が納得するまで帰らないと思うわ」
「あんた、連れ戻しに来なさいよ」
「お姉ちゃんの家で第2ラウンドしてもいいの?」
「いや、それは……」
「でしょ? だからお願い! 夏休みのあいだだけよろしくね」
百合子が何かを言う前に、有希は手際よく電話を切った。百合子のため息が寝室の床に落ちて消えた。