規則的なアラームの音。
その音を聞く度に、朝が来たのだとげんなりする。一馬はゆっくりと体を起こす。隣で寝ている妻の美和子を起こさないように身支度する。今は朝の6時。会社の始業時間は9時だが、8時半にはデスクについて始業の準備を済ませないといけない。30分後には家を出なければ、会社には間に合わなかった。
身支度を終えた一馬は寝ぼけた美和子に見送られながら、初夏のじりじりと肌にしみ込むような暑さを風で散らしながら自転車をこぐ。混雑する電車に揺られながら出社する。
昼休み中、一馬は分譲マンションに関するサイトを見るのが習慣となっていた。
今の賃貸マンションを借りたとき、一馬も美和子も若く、家賃の上限は低かった。しかし現在、一馬は課長に昇進。部長からの信頼も厚く、次はお前だと内々に言われている。美和子は自宅でライター業をしていて、ここ数年はかなり仕事の調子も良いと聞いている。
もういい加減に、引っ越しをするべきだろう。一馬はそう思っていた。