マンションで見た異様な光景

山下さんの住むマンションは、午後の都内にしては人通りも少なく静かな建物でした。

現地に着いてまず確認したのは「郵便受け」です。住民税督促状、日本年金機構からの国民年金納付の案内、さらには法律事務所からの封書など……ギョッとするほど大量の郵便物が詰め込まれていました。

過去には家賃滞納の末、室内で亡くなっていた債務者もいました。「山下さんも、もしかしたら……」。募る不安を打ち消すため、その日はライフラインや洗濯物など現地での一通りの調査を行い、生活の様子を確認しました。

一般的に、家賃滞納が続いて裁判所からの判決書(※)が出てしまったら、その後待っているのは「催告」です。
※部屋の明け渡しと、未払いの家賃の支払いに関する債務名義

催告とは、「不動産会社側から居住者に、期間内に滞納分の家賃の支払いを促す通知」のこと。実際に居住者の居室に入り、家具や備品を確認して強制執行に必要な作業員の人数などを見積もります。

山下さんの場合も例外ではなく、その後は数カ月かけて催告の準備と手続きを進めました。

催告のため再訪

そうして迎えた催告当日。マンションに関係者が集まり重苦しい雰囲気のまま、山下さんの住む301号室のドアをノックして、裁判所の執行官がインターホンを鳴らします。

「裁判所、執行官です。ドアを開けてください!」

繰り返し呼びかけるも一向に反応が返ってきません。仕方なく、現場にいる執行官の指示のもと技術者が玄関のカギを開けます。

ドアを開けた私たちは、目の前に広がる光景に絶句しました。