債権者代理人の仕事

私は都内の不動産管理会社の管理部門に勤務しています。いわゆる「債権者代理人」と呼ばれる仕事で、不動産会社の代わりに家賃の滞納がある居住者への対応を行います。

例えば内容証明郵便で賃貸借契約の解除通知をする、物件の明け渡しを求めて裁判を起こすなど……。裁判所から退去を命じられても物件にとどまる居住者には、強制執行といって建物から強制的に退去してもらうこともあります。

今回は名古屋からの転勤で都内のタワーマンション(以下、タワマン)に転居した後、東京地方裁判所の判決に基づき強制執行に至ってしまった「横井夫妻」のケースをご紹介します。

入居直後から家賃滞納を始めた夫婦

梅雨に入った東京のとあるタワマンでの出来事です。名古屋からの転勤で横井夫妻が転居してきました。ご主人は貿易会社に勤めるエリートサラリーマン、奥様は青山の有名なネイルサロンに勤務するネイリストでした。

<債務者プロフィール>

・夫:横井拓也さん(仮名)、32歳、貿易会社勤務
・妻:横井優香さん(仮名)、31歳、ネイリスト
・都内タワーマンション居住
・家賃等:月額26万円
・入居から5カ月

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華やかに見えた横井夫妻ですが、意外なことに入居後すぐに家賃滞納が始まりました。ご主人は出張が多く奥様も忙しいのか、電話で連絡をとっても留守電になってしまいます。しばらく全く連絡のつかない状況が続きました。

仕方がないので緊急連絡先に記載のあるご主人の両親に連絡を入れますが、こちらも応答がありません。そうしているうちに3カ月の家賃滞納となり、裁判所に対して建物明渡の訴訟(※)を行うことになりました。
※長期の家賃滞納など、契約違反をしている入居者を物件から退去させるための訴訟。勝訴判決を得られれば強制執行も可能となる

そこでひとまず居住中かどうかの確認も含め、私は直接タワマンに足を運ぶことにしたのです。