「みんなで大家さん」は“ヤバい”商品なのか
不動産投資商品である「みんなで大家さん」は怪しいのか、それとも怪しくないのか、を巡って、騒ぎが広がっています。
頻繁にテレビCMも打っていました。撮影場所から察するに、江戸時代の町民たちの様子が描かれています。
町民が大勢歩いているなか、「老後問題」と書かれた、当時の情報メディアである「瓦版」という印刷物を、大声を上げて売り歩く男性がいます。その男性に対して、周りにいる町民たちが「私も」「拙者も」などと言って、「みんなで大家さん」という不動産投資商品につなげていくという展開のCMです。
恐らく、「テレビCMまでやっているということは、広告の審査基準を通っているのだから安全だろう」などと考えて、この不動産投資商品にお金を入れている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
「みんなで大家さん」とは、共生バンク株式会社が展開している不動産ファンド事業のブランド名です。共生バンクは不動産開発事業、不動産流通マネジメント事業、農業イノベーション事業、社会福祉事業、宿泊事業、観光開発事業を事業領域として、17のグループ企業によってこれらの事業を運営している会社です。
そのグループ企業のひとつが、「みんなで大家さん」という不動産ファンドを管理・運営している「都市綜研インベストメントファンド」と、不動産ファンドの販売代理を行っている「みんなで大家さん販売」です。都市綜研インベストメントファンドがさまざまな不動産開発案件をファンド化した後、みんなで大家さん販売がそのファンドを小口化して、不特定多数の投資家に対して販売します。そして投資家は、自分たちが投資した不動産物件から得られる賃料収入を、ファンドの持ち分に応じて配当金として受け取れるというスキームになっています。
みんなで大家さんが話題になったのは、2021年1月から2024年4月まで、合計18回にわたって販売された「シリーズ成田」の配当金支払いに、遅延が生じたからです。
「みんなで大家さん」は「不動産特定共同事業法に基づく匿名組合契約」による形態
具体的に、どのような商品かを説明しましょう。
この不動産投資商品は、「不動産特定共同事業法に基づく匿名組合契約」による出資の形態をとります。
「匿名組合契約」という名称には何となく怪しげな雰囲気もありますが、実はソーシャルレンディングや一口馬主など、個人にも身近なところで結構用いられている契約形態です。投資資金を提供する出資者が匿名組合員、匿名組合契約に基づいて設立されたファンドの管理・運営を行うのが営業者となり、営業者が得た損益に応じて、匿名組合員に配当金が支払われます。仮に、この匿名組合契約に基づいて行われた事業が失敗したとしても、匿名組合員は無限責任を負うことはなく、損失は出資した額の範囲内に限定されます。
シリーズ成田は、成田国際空港に隣接する、約45.6万平方メートルの大型開発用地「成田空港周辺開発プロジェクト用地」の一角を、対象不動産として組み入れた匿名組合ファンドです。これまで募集・販売されてきたシリーズ成田の想定利回りは年7.0%、運用期間は5年~5年1カ月で、申込金額は1口=100万円から、となっています。これを18回にわたって募集・販売し、合計で2000億円近い出資金を集めました。