各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、楽天証券のデータをもとに解説。

楽天証券の投信売れ筋ランキングの2025年10月のトップ2は前月と同じになった。トップは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、第2位は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)だった。第3位は前月第7位の「楽天日本株4.3倍ブル」がジャンプアップした。また、トップ10圏外から第9位に「三菱UFJ純金ファンド」が、第10位に「Tracers NASDAQ100ゴールドプラス」がランクインした。

ブル型国内株ファンドがジャンプアップした背景

楽天証券の売れ筋ランキングトップ10には、国内株のインデックスファンドはランクインしていないものの、ブル・ベア型のファンドが入ってくる。10月に第3位にジャンプアップした「楽天日本株4.3倍ブル」は日々の基準価額が国内株式市場の動きの4.3倍に動くように設計されたブル型ファンドだ。株価が上昇している時に大きなリターンが期待できるファンドといえ、国内株式市場が4月以来7カ月連続で月次上昇している強い上昇相場を受けて人気を集めている。同ファンドは楽天証券の売れ筋トップ10に常にランクインしている人気ファンドだが、第5位以下の下位が定位置であり、第3位に上がったのは過去1年半の間にはない。

国内株の先行きに強気の見方の場合は、「日経平均株価」、または、「TOPIX(東証株価指数)」などの代表的なインデックスファンドがランキングに入ってくることが通例だ。そして、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」がずっとランキング上位を占めているのと同じように、国内株に連動するインデックスに積立投資なども交えて長期の投資資金が入ってくるはずだ。国内株式を主要投資対象としたファンドで唯一売れ筋トップ10に入っているのが「楽天日本株4.3倍ブル」というのは、楽天証券の顧客の間では、現在の国内株式市場の上昇は一時的に過ぎないという見方が強いのかもしれない。

一方で、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が第1位と第2位を占めるのは、当コーナーで確認できる2024年5月以来18カ月連続になっている。「米国株式」、そして、「全世界株式(オール・カントリー)」は、中長期的には上昇基調にあるだろうという非常に強い信念が感じられる。2020年3月の「コロナ・ショック」以降に世界の市場をけん引して上昇した「米国株式」と米国株式が60%以上を占める「全世界株式(オール・カントリー)」は2025年を迎えても、どこで買っても収益に結び付く投資先だった。その結果が、2つのファンドに対する中長期の上昇期待につながっていると考えられる。国内株式については、それほどの成功体験が重なっていない。