各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、みずほ銀行のデータをもとに解説。
みずほ銀行の投信売れ筋ランキングの2025年11月のトップは前月と同様に「ピクテ・プレミアム・アセット・アロケーション・ファンド」(設定はピクテ・ジャパン)が上がった。第2位には新設の単位型(募集期間限定)の「ゴールドマン・サックス社債/One米国株式戦略ファンド2025-12(愛称:おまもりOne・M)」(アセットマネジメントOne)が入った。第3位は前月第4位の「キャピタル世界株式ファンド」(キャピタル・インターナショナル)、第4位は前月第6位だった「グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:未来の世界)」(アセマネOne)が上がった。一方、前月第2位だった「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」(ピクテ)は第5位に後退した。また、「NWQグローバル厳選証券ファンド(為替ヘッジなし・隔月分配型)(愛称:選択の達人)」(大和アセットマネジメント)が前月の第10位から第8位に上がり、トップ10圏外から「野村未来トレンド発見ファンド Bコース(為替ヘッジなし)(愛称:先見の明)」(野村アセットマネジメント)が第10位にランクインした。
元本を重視して「利回り」に着目
みずほ銀行の売れ筋で、9月には5年満期の債券ファンド「Oneグローバル債券ファンド2025-10(限定追加型)(為替ヘッジあり)」が売れ筋ランキングのトップになったが、11月には債券ファンドをベースとしながら株式の値上がり益を付加できる「ゴールドマン・サックス社債/One米国株式戦略ファンド2025-12(愛称:おまもりOne・M)」が第2位に入った。このファンドも5年満期の商品だ。ザ・ゴールドマン・サックス・グループ・インクが発行、または、保証する社債等を裏付資産とする円建て債券に投資し、償還まで得られる利息の収入を主な収益源ととらえ、債券は償還まで持ち切ることを基本とし、元本の確保をめざす。それに加えて、投資リスク水準を年率5%程度に抑えて米「S&P500」に連動するような投資収益をクーポンとして付与する債券にも投資する。
このような単位型の商品は、銀行預金者にとっては「定期預金」、あるいは、貸付信託「ビッグ」(5年)、利付き金融債「ワイド」(5年)などをイメージさせる商品といえるのだろう。いわゆる昭和のバブル期にあたる1990年には、「ワイド」の利回りが年9%を超える高金利となり、「ワイド」の購入のために銀行に預金者が行列をつくるほどのブームがあった。ただ、この「ワイド」は主要な発行体である長期信用銀行(日本興業銀行=現・みずほ銀行、日本長期信用銀行=現・SBI新生銀行、日本債券信用銀行=現・あおぞら銀行)がすべて普通銀行となったため金融債の発行ができなくなった。その後も商工中金や農林中金から「ワイド」の発行は続いたものの、2012年12月をもって新規の取り扱いはなくなってしまった。利回りが低くなって商品としての魅力がなくなったためと考えられる。
銀行の信用を背景として安全確実に資産が増える商品に対するニーズは強い。投資信託は元本保証のない商品ながら、投資対象を債券として利息収入を主たる収益源とすることで極力元本を確保する運用ができる。国内の新発10年国債利回りは2011年12月に年1%の大台を割れ、2019年2月のマイナス金利を経て、2024年11月に年1%の大台を回復した。そして、2025年12月8日には年1.965%にまで上昇し、年2%台を目前にしている。1987年には年6%を超えていたことと比較するとまだ水準は低いが、ゼロ%台の利回りと比較すれば2%近い利回りで運用できれば、資産が増える手応えを得られる。たとえば、利回りが年2%ならば複利で運用すれば、100万円が10年後に121万9000円になる。年0.05%の時には100万円が10年でも5000円ほどの利息しか生まなかったことを考えれば格段の残高増だ。元本が安全であれば、数百万、数千万という金額を預けることもできる。
みずほ銀行を通じて提供される単位型ファンドが根強い人気を保っているのは、銀行がメインとする顧客のリスク許容度にふさわしい商品群の1つのなっているためだと考えられる。

