ジムで深めた釆澤沙織との交流

パーティーを終えた夜は、酒を抜くためにタワマン内のトレーニングジムで汗を流す。ジムは24時間自由に使え、午前0時を過ぎればほとんど貸し切り状態になる。

正直、タワマンの住民とはあまり顔を合わせたくない。自室や共有ラウンジでの営業活動が理事会で問題視されていると聞いた。数日前にも部屋を斡旋した不動産屋から、「こういうマンションは煩方(うるさがた)が多いので、あまり目立つことはしないように」と釘を刺されたばかりだ。
※河合と不動産屋の関係:【ブランドスーツを着てラウンジで商談…タワマン住民たちが警戒する「不審な男」】

かくして、この日も深夜のジムでフィットネスバイクを使っていると、ドアが開いてピンクのウェアが見えた。心臓がドクンと跳ねる。

「こんばんは」

軽い挨拶の言葉と共に、彼女が僕の隣でフィットネスバイクをこぎ始める。

 

釆澤沙織。実年齢は知らないが、見た目は僕と同じ20代半ばくらい。15階の部屋を、研究職のお姉さんと一緒に借りていると聞いた。

沙織自身はコンサル会社の営業職で、毎日終電近くまで働いている。仕事のストレスを家に持ち込まないために、帰宅後はジムに直行して汗を流すのが日課だという。175cmの僕とあまり変わらない長身でスタイルが良く、面差しが日本で人気の韓流ガールズグループのメンバーに似た沙織は僕のドストライクだ。

ジムで度々顔を合わせるうちに言葉を交わすようになった。僕は自分のことを広告代理店勤務で、このご時世で在宅勤務が増えたと話している。

「そう言えば先週末、河合さんのこと見かけましたよ」

「え、何時頃?」

「夕方買い物帰りに駅前で信号待ちしていたら、河合さんが運転する車が正面に止まってて。アルファード、乗ってるんですね。高級車じゃないですか?」

「わっ、見られちゃったんだ」

「ええ、見ちゃいました」

沙織の茶目っ気たっぷりの笑顔がまぶしい。僕はフィットネスバイクを止め、沙織の方に向き直った。

「車、詳しいんだね。良かったら今度ドライブ行かない?」

●やがて河合は過去のターゲットに被害届を出されてしまう。後編【違法な投資勧誘で被害届を出され…犯罪行為に手を染めた男が迎えた“あっけない最後”】で詳説します。

※この連載はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。