息子が伯母に取った非情な態度
病院は管理が厳しかったため、事実婚の妻とはいえ思うように面会は許されなかったそうです。とはいえ、息子さんの代わりに着替えを届けたり、男性の好きなお菓子を差し入れたりしていました。
にもかかわらず、男性が亡くなった後、息子さんが伯母に取った態度は、それはひどいものでした。男性の死を知らされたのは息を引き取った当日の夜で、ご遺体に最後の別れを告げることは遠慮してほしいと言われたそうです。
それでも、お葬式の時には顔くらい見られるだろうと思っていたら、その後1週間以上音沙汰がなく、次に息子さんから電話があった時、「葬儀はこちらで済ませました」と一方的に告げられたのだとか。
それだけではありません。男性の暮らしていた自宅は近いうちに処分するので、置いてある荷物は早く引き上げるように言われ、伯母は言葉を失ったそうです。
無理を押して翌週何日か男性宅に通い、掃除をしたり、自分の荷物を持ち帰ったりしましたが、一段落した後は心労のあまり寝込んでしまいました。私は伯母のマンションから2駅先に住んでいて、ちょうど産休中だったこともあり、母に頼まれて何度か伯母の様子を見に行きました。
伯母はすっかり憔悴(しょうすい)し、「息子さんから疎ましく思われているのは知っていたけれど、こんなやり方はひどい」と涙を流していました。
息子さんの非情な仕打ちはさらに続きました。
数カ月後、今度は息子さんの代理人を名乗る弁護士から伯母に連絡がありました。その弁護士は、「亡くなった男性のお金の流れを調べたところ、手元に残っている金額と齟齬(そご)がある。あなたが持ち出していたのではないですか」と厳しい口調で伯母を責め立てたそうです。
混乱した伯母は、男性がまだ元気だった頃、生命保険の満期金が下りた際にその半分に当たる500万円を渡されたことを弁護士に話してしまいました。すると弁護士は、伯母にこう言い放ったのです。
「そういうのを生前贈与と言うんです。しかし、年間110万円を超える贈与は課税されます。あなたはその年、贈与税の申告をしていませんよね? これは脱税ですよ」
さらに、男性が伯母の誕生日に毎年高価なジュエリーをプレゼントしていたことを聞き出し、もらった分は全て息子さんに返すように迫ったと言うのです。
その話を伯母から聞かされた時、会ったこともない息子さんに対して激しい怒りの感情が込み上げてきました。
「そんな人の言いなりになる必要は全くないからね!」。そう伯母に言い含めて駆け込んだ先が、自営業の夫が取引先とのトラブルでお世話になったことがある弁護士の岩田さんの事務所でした。
●弁護士・岩田さんの気遣いに思わず涙……。追い詰められた高柳さんと伯母の状況を一変させたプロのアドバイスは、後編【「お金を持ち出したのでは?」事実婚の夫の死後、因縁をつけられた女性…苦境を救った正義の味方の活躍】で詳説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。