義母の言いなりになる夫の言い分

「結婚して一家を構えたのに、お義母さんの言いなりになっているのはおかしいと思わないの?」と尋ねると、こんな話をしてくれました。

「母さんは厳しいおばあちゃんと同居していたから、もっと大変だったんだよ。父さんと結婚する前は地元の有名私立の教員をしていたのに『梶田家の嫁が職業婦人だなんて恥ずかしい』と言われて嫌々辞めたんだ」

思わず「私は働かせてもらっているだけマシだということ?」と突っ込みたくなりましたが、彼のつらそうな顔を見て止めました。

しかし、彼の口ぶりから、義父母が一刻も早く私たちに跡継ぎの男子が誕生することを望んでいて、そうなったら彼の実家で義父母と同居することになりそうなことはうすうす分かりました。あまりに一方的な押し付けへの嫌悪感で体が震えました。

そもそも、こんな前時代の遺物のような家庭がいまだに存在していることが信じられませんでした。

私自身、女性たちの代表として社会で活躍するような才覚があるわけではなく、女性の人権を強く主張するようなタイプでもありません。それでも、このまま義母と同じ「梶田家の嫁」としての人生を歩むのは絶対に嫌だと思いました。今なら間に合うと「離婚」の二文字も頭をよぎりましたが、思い切って行動できず、ここまで来てしまいました。

コロナ明けで友人たちの結婚式が続く中、お祝い金の出費もバカにならず、そう遠くない将来には私の貯金も底を突きそうです。そうなったらわが家はどうなるのか不安しかありません。

それでも離婚を選ばない理由

それならなぜ離婚を言い出せないのかというと、やはり彼への執着があるように思います。

理不尽な家のしきたりにがんじがらめになっているのは情けないのですが、義母への言葉から分かるように人の気持ちに敏感で思いやりのある人です。そして、そうした優しさが日々自分に向けられているのも感じています。何より、外見は私のタイプど真ん中ですし……。

私自身のプライドもあり、私のことをうらやましがっている友人たちにこんな打ち明け話はとてもできません。かと言って、結婚を心から喜んでくれた両親にも相談はしづらく、日々悶々とする中、じりじりと時間だけが過ぎていくのです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。