想像以上に難しい、定年後の就職活動

退職後は現役時代にあったストレスもなく、失業手当をもらいながら解放感に浸たる毎日を送っていました。しかし、そんな幸せな時間も長くは続かず、住宅ローンの支払いが次第に家計を圧迫するように……。

このあたりから、将来への不安がムクムクと膨らみ始めます。

何か行動を起こさねばと資格を取るために学校へ通ったり、独立もできるかもしれないと勉強会に行ったりするも、現実は想像以上に厳しく、なかなか次の仕事が決まりません。

「一体どうしたらいいんだ……」

悩みは尽きず、きっかけすら掴めない日々が続きます。

そんな時、採用業務を募集している会社を見つけました。複数の保育園を経営している会社で、急ぎで保育士の採用をしたいが、採用担当者が退職するので急遽人材が必要になったというのです。

髙橋さんは現役時代には営業職の経験が長かったものの、人事部門で採用職の経験がありました。就職活動に苦戦する中、「これは千載一遇のチャンス!」と迷わず応募します。その結果、10年近く従事した採用職の経験が評価され、即座に採用へとこぎつけました。

髙橋さんの前職は従業規模の大きい会社で専門職のスキルを深めやすい環境でした。中小企業は、採用業務を専門として組織化している会社は少ないと思われるので、髙橋さんのように専門職のスキルを活かせたことは、就職活動を成功させた大きな要因だったと考えられます。

「前職での取り組みが、定年後にも役に立つものだな」

髙橋さんはそう実感すると同時に、未経験の業界でキャリアを積むことに対し、今までと違う世界が拓けそうだと期待で胸がいっぱいでした。

こうして就職活動に苦労しつつも、セカンドキャリアの一歩目を踏み出した髙橋さん。しかし、再就職が叶った安堵もつかの間、待ち受けていたのは怒涛の試練なのでした――。

●再就職後に起こった “予想外の出来事”とは、果たして何だったのでしょうか? 続きは後編「57歳で再就職、生じた周囲との不和…関係を激変させた“涙の謝罪”」で紹介します。