人生100年時代――老後に備え老後資金準備を進めることと同じくらい大事なのが、「長く意欲的に働く」こととされています。70 歳までの就業機会の確保を企業に求める「改正高年齢者雇用安定法」もその流れを後押し、意欲のある人はエイジレスに活躍できる時代に転換しつつあります。

一方、数年~10年後に60代を迎える「バブル入社組」ミドルシニアの中には、定年後の働き方、キャリアの切り開き方が分からないと悩む人も多い模様です。

話題の書籍『定年NEXT』の著者・池口武志氏は、そんな悩めるミドルシニアにとって大きなヒントになるのは「ロールモデル」の存在だといいます。『定年NEXT』には、若い人にはない経験と知恵、人脈を生かし、人と人、組織と組織を「繋ぐ」働き方で輝く24人の「リエゾンシニア」たちが、どう自身のキャリアに向き合い、切り開いてきたのかに迫るインタビューが掲載されています。

そんな『定年NEXT』より、今回はミドルシニアの“働く”を取り巻く環境の大きな変化について解説した第1章の一部を特別に公開します(全3回)。

※本稿は池口武志『定年NEXT』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。

ミドルシニアにチャンスの時代がやってきた

皆さんは人生後半、あるいは60歳以降の働き方や生き方をどう描いているのでしょうか。

実はミドルシニアにとっては、これまでにない新しいチャンスが訪れようとしています。従来は一つの会社で仕事に邁進し、60歳定年後は再雇用で同じ会社で65歳まで雇ってもらえるという単線的な働き方が一般的でしたが、国も企業もミドルシニアが意欲を持って働ける多様な環境を整備しようとしています。

その背景の1つには少子高齢化による労働力不足があります。ご存知のように生産年齢人口(15~64歳)は年々減少を続けています。一方、人口に占める65歳以上の高齢者の比率は29.1%に達し、2040年には35.3%になるとの推計も出ています(国立社会保障・人口問題研究所)。

国の活力を維持するためにはミドルシニアが活躍できる環境が必要です。政府は5年に1回定める「高齢社会対策大綱」(2018年2月16日閣議決定)の目的に「65歳以上を一律に高齢者と見る一般的な傾向はもはや現実的なものではなくなりつつあり、70歳やそれ以降でも、意欲・能力に応じた力を発揮できる時代が到来。すべての世代が満ち足りた人生を送ることのできる環境をつくる」と謳っています。

そして「年齢による画一化を見直し、すべての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会をめざす」とし、具体的には副業・兼業の普及推進、リカレント教育の抜本的拡充などの政策を掲げています。まさに定年NEXT時代を標榜していると考えてよいでしょう。