デジタル化の流れも、ミドルシニアの活躍を後押し

企業も同じです。従業員の高齢化が年々進み、従業員全体に占める56歳以上の比率も高くなっています。国内従業員約1万人のある大手製造業では2021年度の56~65歳の比率は20%に達し、2030年には25%になると予測しています。おそらく大手企業の多くが同じ状況にあると思います。つまりミドルシニアを戦力化していかないと企業の持続的発展は望めませんし、そのためには意欲高く働いてもらえる環境整備が急務となっています。

ミドルシニアの活躍できるチャンスが広がるもう一つの背景はデジタル化の流れです。既にデジタル化によるビジネスモデルの変革が加速しています。デジタル、ITと聞くと腰が引ける人がいるかもしれませんが、何もIT人材になれ、ということではありません。今まで培った知識・経験・スキルとデジタルを融合させることで新たにイノベーションを生み出す時代が到来し、企業もそのことに気づきはじめています。

そういう意味ではミドルシニアは若い人に比べて知識・経験・スキルは豊富なはずです。ミドルシニアの豊富なキャリアを土台にしながら、最新のデジタル技術をチームとして取り入れることでイノベーションを実現する企業が増えつつあります。

AI時代においても活躍領域は拡大

AI(人口知能)の発達やロボット化による業務の自動化で仕事がなくなる危険性も広く指摘されています。その一方で、保健医療サービス、製造技術者、研究者、管理的職業などはAIによる代替が難しいと言われています。つまり、対人関係や人間関係の構築によって成り立つ仕事は今後も、人が持つ能力やしなやかさが求められることになります。

その点、長年の経験で培った人間関係構築力に長けたシニアの役割は増えていくのではないでしょうか。また、年を重ねると肉体的機能が衰えると言われますが、それをAIなどデジタル技術が補ってくれるようになります。移動による負担を軽減するテレワークはまさにその一つです。

しかも高齢者の身体的機能は10~20年前に比べて15歳程度若返っていると言われます。また、短期の記憶力や情報処理スピードである「流動性知能」は50代以降、衰えると言われますが、これまでの蓄積である知識力や筋道を立てて物事の本質をとらえる論理的思考力・抽象化力である「結晶性知能」は70代前半まで向上し続けるという老年心理学の研究報告もあります。

つまり、記憶や情報処理はAIに任せることで、ミドルシニアの能力が十分に活かせる時代が到来しつつあるのです。しかも今の会社での仕事にとどまらず社会のあらゆる領域で活躍できる可能性が開かれてきています。