スキーリゾートとしてかつて脚光を浴びた新潟・湯沢町のリゾートマンション群。しかし、バブルの終焉とともに資産価値は大きく下落しました。
購入当時は「夢のセカンドハウス」だった物件が、いまや処分にお金がかかる“負動産”となり、所有者を苦しめています。
なぜこうした事態に陥ったのでしょうか。現地取材を重ねる吉川祐介氏が、リゾートマンションの今を伝えます。(全3回の3回目)
●第2回:湯沢=“激安”は誤解? 駅チカと苗場でここまで違う、マンション相場の明暗
※本稿は、吉川祐介著『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)の一部を抜粋・再編集したものです。
マンションの売値が10万円である理由
ではなぜ苗場エリアだけ価格が暴落しているのだろうか。
挙げられるのはやはりアクセスだ。このエリアは越後湯沢駅からおよそ20㎞も離れた山間に位置し、スキーに特化して開発が進んだリゾート地のため、他の利用用途に乏しいうえ、公共交通機関でのアクセスも悪い。
それでいて数千戸にも及ぶ居室が供給されたため、圧倒的な供給過多の状況に陥ってしまった。
現在でも苗場周辺の中古マンションの物件広告を見ると、物件によって築年数や間取り、広さは様々であるにもかかわらず、価格はどの物件であれ一律10万円、という状況が常態化している。
この価格で業者に売買の仲介を依頼した場合、おそらく手数料を支払うと売主の手元には1円も残らないか、逆に販売価格以上の仲介手数料を支払って、事実上、お金を払って物件を売却(処分)しているのは間違いない。
購入を希望する人の視点に立って考えてみよう。
どんな部屋でも一律10万円となれば、誰だって眺望がよく快適な部屋を選択するだろう。
マンションの管理費は基本的に居室面積に応じて決まるもので、北向きの低層階だからと言って管理費が大きく割安になるわけではない。リゾートマンションを購入する際は一番高額な部屋を買えと指南しているメディアを見たことがあるが、これは一理ある話で、限られた需要しかないリゾートマンションの場合、価格の高い部屋というものは、皆が欲する条件があるからこそ高いのであって、価格が安い部屋というのは、それはそのまま売却の困難さに直結しているのだ。