業者が提示できる最低限のラインが10万円
それが、最上階の部屋でも10万円となったらどうなるか。条件の悪い部屋は、たとえ10万円まで価格を下げたとしても、いつまでたっても何の引き合いもなくなってしまう。
そして実際、苗場のマンションには、おそらく長期間広告が出され続けていると推察される物件がかなりある。
僕は湯沢に限らず、物件広告サイトは日常的にチェックして大まかな価格の動向は調べているが、そんな地域でも格安の物件というのは一定数の「お気に入り登録者数」(物件サイトによってはその数を公開している)が集まるものだ。ところが、苗場に限ってはその傾向がまずなく、10万円のマンションの広告に、一人のお気に入り登録者もついていないときも多々ある。
業者も商売なのだから、赤字になるような手数料設定を行うことはないが、旨味のある商品ではないので宣伝に熱心になるわけでもない。
単に業者が提示できる最低限のラインが10万円というだけの話で、売主の皆が皆、10万円の売却益を求めて広告を出しているわけではないのだ。
売値に10万円と記載されていたとしても、長期間買い手を待ち続けている売主であれば、おそらく交渉次第でもっと値下げもできるとは思うが、もはやそれを行う人も現れないほど需要が激減している。そしてこの苗場の異常なマンション市場が、あたかも湯沢全体の状況であるかのように吹聴されている。
バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮
著者名 吉川 祐介
発行元 KADOKAWA
価格 1,100円(税込)