近年、都市部の不動産価格は大きく上昇しています。一方で、日本各地で空き家の増加が社会問題にもなっています。
少子高齢化、金利上昇、在留外国人の急増など、大きな変化のなか、不動産業界は過渡期を迎えているようです。不動産コンサルタントの長嶋修氏は「不動産に関する〝常識〞が変わりつつある」といいます。
多くの人にとって不動産は、一生に一度の大きな買い物です。後悔しないためにも、不動産の新常識を長嶋氏に解説してもらいます。(全3回の3回目)
●第2回:駅近マンションは手が届かなくなる⁉ 立地の重要性がさらに高まるとプロが予測する“これだけの理由”
※本稿は、長嶋修著『2030年の不動産』(日経プレミアシリーズ)より、一部を抜粋・再編集したものです。
地方にもタワマンの波が押し寄せる
タワマンの総数が圧倒的に多いのは東京です。次いで多いのが大阪、神奈川、兵庫、千葉、埼玉といったところ。いずれも日本の中では特に人口が密集しているエリアですが、実はそのほかの大部分の道府県にも、すでに多くのタワマンが建設されており、その数は少しずつ増加し続けています。原則として、タワマンは駅前・駅近の好立地に建設されるため、新幹線の停車駅周辺などには高確率でタワマンがそびえ立っています。
地方でタワマンが増えていることには、いくつかの理由が考えられます。まず、デベロッパーが都心部で新築のタワマンを供給できなくなり、地方に流れてきているというのが一点。加えて、自治体のニーズも挙げられます。都心ほど人が多くないエリアにわざわざタワマンを建てる必要があるのか、と思われるかもしれませんが、今、多くの地方都市では郊外から市の中心部に人口が回帰する現象が見られています。
一人暮らしが困難になり、車の運転も難しくなった高齢者の場合、利便性の高い駅前に移り住んだほうが安心・安全です。自治体としても、タワマンが建つと人口が増え、地価の上昇も見込めますし、人口密度が高くなるため行政効率がアップ。つまり、コンパクトシティ計画の促進に役立てることができるため、タワマンを歓迎しているケースが多いのです。