貿易の活発さを示す「バルチック海運指数」

バルチック海運指数は主要航路のばら積み貨物船の運賃から算出する、国際的な海上運賃の指標である。

先述の2つの指数と異なるのは、株価ではなく「運賃」がベースとなることだ。英・ロンドンにあるバルチック海運取引所が算出、公表しており、1985年1月4日を1000として現在の値を計算している。2021年8月24日の終値では4201を記録した。

ばら積み船とは梱包されていない鉄鉱石、穀物などコモディティー商品輸送を担う船を指す。商品輸送の需要が高まり、ばら積み船の稼働が増えると、運賃も高くなり、バルチック海運指数も上昇する。

バルチック海運指数は主に貿易の活発さを示し、経済やコモディティー商品相場の先行指標としても扱われる。運賃は海運関連の会社の景況感・株価に影響するため、同指数から海運株市場の動向も見通すことが可能だ。

なお、世界で最もコモディティー商品の需要が大きい中国や、鉄鉱石輸出の最大国ブラジルの動向が同指数を大きく左右することもある。

1990年代から2000年初頭までは1000~2000の間を推移してきたものの、2008年には中国経済の急成長に伴う鉄鉱石輸入増加など、新興国の台頭による原料輸送需要の高まりで過去最高となる12000付近にまで達した。しかし、リーマンショックにより暴落。2016年2月には300を切るなど、その後もたびたび急騰、急落を繰り返しながら推移していた。

2020年5月にはコロナ禍で経済活動が停滞し、ばら積み船が運搬する資源の需要が低下する見通しから400付近まで下落していたが、2021年6月頃に景気回復の期待から急上昇。11年ぶりの高値3267を記録するまでに伸びた。

その後も世界的な荷動きの活発化を背景に、運賃市況が高騰して指数はさらに上昇。それに連動し、国内外の海運関連株も値上がりを見せている。

今回も他国よりも先行して経済再開を始めた中国がバルチック海運指数を押し上げたかっこうだが、最近は中国の経済活動の鈍化も指摘されている。欧米先進国でも同様の懸念があり、今後も指数が上昇するか見通しは不透明だ。

なお、同指数に連動する投資信託やETFは国内の証券会社では取り扱っていないため、直接投資することは今のところ難しい。しかし、同指数と連動性が高いコモディティー商品や海運関連株へ投資する際の一つの参考として使うことは可能だ。

 

まとめ

景気サイクルは本来、長い年月をかけて上昇と下降を繰り返していく。しかし、今回のコロナ禍はそのサイクルを加速させ、緩やかに推移していくはずの指数も急激な変動を見せた。

生活様式が変わり在宅時間が増えた結果、テレワークや宅配サービスなど新たな需要が生み出され、それに伴いSOX指数のように大躍進した指数もある。イレギュラーな状況下で大きな変動を見せる指数の動きを把握することは、世界経済の動向の把握にもつながる。今どのような業界や商品の需要が高まっているのか、将来性のある産業分野を知る良い機会にもなるだろう。