三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2025年5月のトップは新規設定ファンドで単位型の「ゴールドマン・サックス社債/FOLIO・AIマルチアセット戦略ファンド2025-05」だった。このファンドがトップになったことで、前月の順位はおおむね順次繰り下がることになったが、前月第2位だった「三井住友・225オープン」は第5位に後退するなど順位の下落が大きかった。

また、前月は第5位だった「SMBC円資産ファンド」は第4位に順位を上げた。前月トップの「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」は第2位に後退し、第3位だった「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」は第3位を維持した。総じて株式インデックスファンドのランクは下がったが、前月第10位だった「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」は第9位に順位を上げた。

 

◆波乱の市場で「安定」に価値

三井住友銀行の売れ筋ランキングでトップになった「ゴールドマン・サックス社債/FOLIO・AIマルチアセット戦略ファンド2025-05」は、ベースはゴールドマン・サックスが発行する円建て社債に投資し、約5年後の満期償還時の元本確保を目指すというもの。これに加えて、人工知能(AI)運用に強みを持つFOLIOの「FOLIO-AIマルチアセット分散投資VT3指数」の累積収益率により決定される実績連動部分の獲得を目指すことを特徴とする。戦略指数は、先進国株式のETF、米国および新興国の株式指数先物、米国国債先物、CDS指数を活用した米国ハイイールド債券、米国不動産ETF、金先物等で構成され、AIを用いて資産配分を最適化するというリスクを抑えたバランス型のファンドになる。

実際に「FOLIO-AIマルチアセット分散投資VT3指数」の収益率がいかほどのものかは、結果が出てみないとわからないが、社債部分の発行条件は、利金(固定クーポン)が0.961%に決まった。このゴールドマン・サックス社債の利金から信託報酬等を差し引いた分配原資のなかから、年1回、1万口あたり45円程度(税引前)の分配を行うことを目指し、FOLIOの指数から得られた収益を上乗せするパフォーマンスのイメージだ。初めて設定されたファンドながら、同ファンドの設定日の純資産総額は753億円を超え、年初から新規に設定されたファンドの中では2番目に大きな新規設定額になった。当初募集にあたったのは、三井住友銀行の他、SMBC日興証券、SBI証券だった。

4月に米トランプ政権が発表した大規模な関税政策以降、世界の株式市場は不安定な状況にある。そこに加えて、期待されたウクライナ戦争の停戦が見送られ、イスラエルとイランが戦争状態に入るなど地政学的なリスクが増大している。市場が不安定な状態にあるからこそ、一定の安定収益が期待される投資商品に強いニーズがある。これは、第4位に順位を上げた「SMBC円資産ファンド」への需要にもつながっている。同ファンドは、国内債券と国内株式を主要な投資対象として安定的な収益の獲得をめざすファンドだ。国内株式についてはマーケットニュートラル戦略と高配当株式を投資対象とし価格変動リスクを抑えることを強く意識している。

「SMBC円資産ファンド」のトータルリターンは、2025年5月末時点で過去1年間が1.82%とほぼ横ばいの成績だ。1年程度のパフォーマンスでは面白みが感じられないが、過去3年が6.71%、5年では12.07%になる。国内株式インデックスファンドの「三井住友・225オープン」は過去3年で45.34%、5年では85.88%であるため、比べると大きく見劣りしてしまうが、インデックスファンドは過去1年ではマイナス0.12%とマイナスの成績だ。年初からのパフォーマンスもマイナス5%程度になっている。小さくても安定的にプラスのリターンを狙っていくのか、マイナスリターンがあったとしてもより大きなリターンを狙っていくのかの違いだ。2025年になってからの環境ではより着実なリターンが望め、株価下落時に抵抗力のある「SMBC円資産ファンド」に魅力が感じられるということだろう。繰り返しになるが、もちろん、株式市場が好調な時には株式インデックスファンドのリターンには追い付けないわけなので、それぞれの商品の特性を見極めて選んでいくことが大事だ。