◆欧州株の上昇で「MSCIコクサイ」に人気

三井住友銀行の売れ筋の一角に「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」が食い込んできた。「MSCIコクサイ」は、日本を除く先進国株式インデックスとして知られている指数だ。2024年までは米国株式が世界の市場を圧倒的にリードしていたため、インデックスファンドの人気も「S&P500」に偏っていた。また、インドや中国などの新興国の成長にも目を配りたいという考えの投資家には「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」(除く日本)を対象とした「全海外株インデックス」が使われてきた。2024年までの人気はこの2択であり、「MSCIコクサイ」はすっかり影の薄い存在だった。

ところが、2025年になってドイツ「DAX」や英国「FTSE100」など欧州先進国の株価指数が次々と史上最高値を更新するようになった。米国「S&P500」などが2025年2月に最高値を更新したことを最後になかなか上抜けないことを横目に、「DAX」は5月に入っても史上最高値を次々と更新し、6月になって「FTSE100」も史上最高値を更新する高値に進んだ。これまでは、ウクライナ戦争やロシアへのエネルギー依存の高さなどから、欧州経済の先行きに暗雲が感じられ、加えて、欧州における異常ともいえる「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」への傾斜が敬遠されてきた。だが、ウクライナ戦争には終わりが見えないものの、ロシアへのエネルギー依存については依存度を低下させる投資が進展。加えて、ロシアへの対抗を意識した防衛費の増額を欧州各国で進めている。特に、防衛予算を増額したドイツで軍需産業をはじめとした防衛関連企業の株価が上昇している。

株価が大きく上昇するようになった背景には、欧州における過度な「ESG投資」に対する見直しが進んでいる影響もある。あまりにも過大な負担を企業に求めていることが疑問視されるようになり、報告義務を大企業に限定するなど規制の緩和が進んでいる。

実際のパフォーマンスでは、「MSCIコクサイ」は「全海外株インデックス」と連動し、やや下回る動きになっている。ただ、米国の「S&P500」や「NYダウ」と比較すると明らかに優位なパフォーマンスを続けている。当面は米国株式に対して「MSCIコクサイ」優位の展開が続きそうな勢いだ。

 

執筆/ライター・記者 徳永 浩