*税金の考え方

iDeCoを一括で受け取ると退職所得、分割で受け取ると雑所得となり、所得税や住民税の金額が異なります。一括受け取りの場合は退職所得控除、分割受け取りの場合は公的年金等控除という非課税枠があります。

退職所得控除は勤続年数やiDeCo加入年数によって異なり、勤続年数が35年の健一さんの場合、1850万円です。つまり、退職金とiDeCoの合計額が1850万円までなら非課税になるというわけです。しかし、健一さんの場合、退職金だけで2000万円あるため、退職金だけで控除枠を使い切り、iDeCoには退職所得控除を適用することができません。一方、65歳まで加入を続けるとiDeCoの加入期間が5年伸びるため、新たな退職所得控除290万円を作ることができます。

分割で受け取る場合は、公的年金等に係る雑所得は、65歳未満は年間60万円まで、65歳以降は年間110万円までは非課税です。かりにiDeCoを5年分割で受け取ると65歳までは給料と合算して、65歳以降は国の年金と合算して税金が計算されます。

*社会保険料の考え方

60歳一括受け取り・60歳から5年分割受け取りの場合は、社会保険料への影響はありません。健一さんは65歳まで会社で働くため、社会保険料は再雇用の給料をもとに計算されます。一方、65歳になると国民健康保険に加入することになりますが、国民健康保険は前年の雑所得や給与所得をもとに計算されます。退職所得は含まれません。したがって、65歳から分割で受け取った場合のみ、iDeCoの金額が社会保険料に影響することになります。

*資産の使い道

健一さんは65歳までは働く予定で、奥様も60歳までは働く予定のため、65歳までは二人の収入があれば生活が可能です。60歳でiDeCoを受け取ったとしても、当面使う予定はなく運用に回すことを考えています。ただNISAの1800万円の非課税枠は埋まる予定のため、課税口座での運用になると想定しています。そのため、税金がかかるならiDeCoで非課税運用を続けた方が良いのかと、なおさら考えてしまうようです。

●これら4つの選択肢の中で、健一さんにとって最も有利なのはどれでしょうか? 後編【「税金より大切なことがある」iDeCoの受け取り方に悩む定年前の58歳男性…最終的に気づいた「本当の正解」】では、シミュレーション結果を比較しながら、数字の裏に隠された「本当の正解」を明らかにします。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。