大喧嘩から2週間が経過

この日から春佳と俊介の関係はギクシャクするようになった。同じ家にいるのにどこか距離を感じ、習慣だった晩酌にも春佳は参加しなくなった。倫太郎の前でこそ今までと同じように接してはいたものの、2人きりになればほとんど口はきかなかった。

交際をしていた期間も含めて、ここまでこじれたのは初めてのことだった。だからこそ、どう歩み寄ればいいのかが分からない。

そんな調子で2週間が過ぎ、時間が経てば経つほどに仲直りのきっかけは掴めなくなっていった。

春佳はデスクワークで凝った目頭を揉んで席を立ち、給湯室へと向かった。するとそこには後輩の広田の姿があり、彼は焦った様子で電話をしていた。何か問題だろうか。春佳がコーヒーを入れ終わると同時に広田も電話を切ったので興味本位で声をかけてみた。

「どうしたの? なんか慌てた感じだったけど?」

「いやそれがレストランを予約してたんですけど希望の個室が取れてなかったみたいで、ちょっと相談を」

なんだプライベートの話か、と春佳は息をつく。

「へえ、奥さんのために? 誕生日近いんだっけ?」

「違いますよ。今日って夫婦の日じゃないですか。だからいいレストランを予約して、びっくりさせようと思って準備してたんです」

広田は照れくさそうにそう説明してオフィスに戻っていった。

春佳はコーヒーにミルクを入れて混ぜながらスマホで調べ、今日が2月2日で語呂合わせから夫婦の日と定められていることを知った。

結婚して5年。もちろん2月2日に何かをしたためしはない。しかしこれは良い機会だ。もちろん広田のようにレストランを予約したり、大がかりなことは今からでは難しいけれど。

コーヒーを口に含んだ春佳の頭に、ふと妙案が思いつく。

●息子・倫太郎の私立受験を巡り、夫・俊介と初めて大喧嘩してしまった春佳。2週間も口をきかない冷え切った関係が続く中、偶然知った「夫婦の日」をきっかけに仲直りを試みることに…… 後編【冷戦状態の夫婦を救った夫婦の日…同じケーキ屋で買い物をした2人が息子の未来についてたどり着いた答え】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。