よみがえる高校時代の思い出

樹里は化粧室の洗面台で顔を洗い、タオルで水気を押さえた。鏡の中の自分は目の下が少し赤く、唇も乾いているし、酔いつぶれて醜態を晒したことへの後悔もある。

それでも、先ほどよりはいくらかましな気分だった。

化粧室を出て部屋へ戻ろうとすると、睦月が漫画の入った棚を眺めていた。

「……ここ」

背表紙の並びが、急に胸をつかむ。睦月の隣に並んだ樹里は思わずそうつぶやき、漫画の背表紙をなでていた。

高校の頃、樹里たちは放課後によく漫画喫茶にやってきた。お互いがおすすめする漫画を読み合ったり、ドリンクバーのジュースを混ぜてみたり、くだらない会話をし続けて隣からうるさいと怒られたり……そういう思い出のいろいろが一気に押し寄せてきた。

「思い出した?」

「うん。さっきは分からなかった。けど、この棚見たら一気に思い出した」

背表紙に添えていた指を離しながら、樹里は睦月に向き直った。

「同窓会でのこと、ごめん」

「……何のこと?」

「無視、したから。みんなに変わった、キレイになったって言われてちやほやされて、陰キャの癖に陽キャに混ざった気になって、睦月のこと……」

「ああ、そのこと。別にいいよ。気にしてない」

睦月はあっさり言ったあと、でもと付け加えた。

「でも、お酒の飲み方は考えたほうがいいよ。あんな飲み方してたら絶対肝臓壊すって」

「ごめん」

「いいよ、友達だから」

睦月にそう言われて、樹里は思わず泣いてしまった。

ほら廊下で泣くとうるさいって怒られちゃうよ、と言いながら頭を撫でてやさしく慰めてくれた睦月と個室に戻り、泣き止むまで待ってもらった。そのあとで、高校生ぶりに懐かしい漫画を読んだ。

睦月が薦めてくる漫画は何回読んでも感動的で、樹里たちは2人そろってまた少し泣いた。