勧められるままに飲み続けて

二次会の居酒屋は同窓会より照明が暗く、人との距離が近かった。樹里は入口で「こっちこっち」と手招きされ、空いている席に押し込まれるように座った。

「山崎さんって、お酒飲める人なんだ。意外かも」

「甘いの専門だけどね。正直ビールはまだ苦手」

隣の女子がカクテルのグラスを受け取って笑う。

「分かる。私も無理」

「じゃあ、今日はこれで乾杯」

「いえーい、みんなちゃんと飲んでるー?」

たしか高校時代はサッカー部だった男子が倒れこむようにして樹里たちの肩に腕を回す。隣の女子はうっとうしそうに男子を払いのけながら、飲んでるよとカクテルを一気に飲み干した。その子は空のグラスを掲げながら、カラコンの入った目で樹里を真っすぐに見てくる。つまりはそういうことだ。あなたも飲め、と言われていた。

樹里はグラスに口をつけ、一気に傾けた。喉がかっと熱くなり、熱が顔までのぼってくる。

「いいねいいね、2人とも」

男子は真っ赤な顔でグラスを空にする。3人分のお替りを勝手に頼まれ、でてきたお酒を順番に飲み干した。

「ねえ樹里聞いてる?」

「……あ、うん聞いてるって。ウケるよね、あれ」

誰かが肩を叩き、カメラを向ける。

「集合写真! はいはい、真ん中もっと寄って!」

樹里は言われるまま体を寄せ、フラッシュに目を細めた。撮り終わるとすぐ別のグラスが回ってくる。

「樹里、次これ飲んでみな。案外飲みやすいよ」

「ほんとだ。いくらでもイケそう」

ろくに確かめもせずグラスの中身をあおると、周囲の歓声が湧いた。

しばらくしてお手洗いに行こうと立ち上がった拍子に、膝が椅子に当たり、テーブルが少し揺れた。

「お、大丈夫?」

「平気平気。ちょっと当たっただけ」

「トイレ一緒行く?」

「ううん、平気ー」

ぐらりと歪んでいく視界でトイレへと歩きながら、ずいぶんと濃い店内の空気を感じていた。笑い声が遠くなったり近くなったりする。

「三次会どうする? カラオケ?」

「ほら、邪魔だから端に寄ってー」

「朝までいっちゃおー!!」

「お水飲む人ー?」

「樹里も行くよね?」

「居酒屋とカラオケどっちにする?」

返事をしようとして、言葉が口の中でほどけた。足元の地面が少し傾いて見える。次の瞬間、視界が暗くなった。