<前編のあらすじ>

夫・充さん(仮名・53歳・年収1500万円)、妻・加代さん(仮名・50歳・年収1000万円)の共働き夫婦は、早期退職を検討してFP前田菜緒さんの元へ相談に訪れます。

きっかけは、体が弱かった加代さんの体調不良。充さんは「いつでも妻が仕事を辞められる状態にしてあげたい」と考え、夫婦でスポーツ観戦をしながら旅行を楽しむ生活を実現するため、目標額1億5000万円を達成し、現在の金融資産は1億6000万円に。

ところが、家計をシミュレーションすると、月55万円の生活費と年金手取り約32万円との差額から、65歳以降の不足額は1億3000万円、退職後から年金受給までの期間を含めると必要額は約2億2000万円という結果に。加代さんは「32万円では、全然足りないですね」と驚き、生活レベルを維持するなら予定通りの早期退職は難しいことが明らかになりました。

●前編:【世帯年収2500万円・金融資産1億6000万円のパワーカップルが早期退職を断念した“意外な原因”】

不足の金額にどう対策を取るか

資産額1億6000万円に対して、必要額は2億2000万円のため、6000万円が不足します。ただ、退職金として充さんが約1500万円、加代さんが約1000万円を見込めるため、実質は約3500万円の不足になります。この不足を埋める対策としては①収入を増やす、②支出を減らす、当然のことですが、このどちらかしかありません。

なお、もう1つ運用でカバーする方法もありますが、今回は運用に頼る対策は採用しないことにしました。なぜなら、資産の引き出しや運用状況の悪化の可能性を考えると、資産がショートする可能性があったからです。現在の資産は株式や投資信託、預金、金などに分散されています。比較的安定運用を見込める投資信託は、このうち約9000万円です。仮に年4%で運用できた場合、年間の運用益は約360万円(毎月30万円相当)になります。

生活費や住居費を資産から取り崩しながらでも、運用益が得られていれば、資産の減少スピードは緩やかになるように見えます。実際、計算してみると65歳時点の投信残高は約5000万円あり、その他資産や退職金を含めると総資産は約1億4500万円残るという結果になりました。65歳以降の不足額は1億3000万円ですから、これだけ見れば資産が余っているように見えます。しかし、取り崩す金額は、生活費と住居費だけではありません。車の買い替えや家のリフォームなどまとまった資金を一度に引き出すこともあるでしょう。

さらに、相場が下落している局面でまとまった資金を引き出すと一気に残高が減り、それ以降、相場が戻ったとしても小さくなった資産からは小さな利益しか産まなくなってしまいます。したがって、運用しながら取り崩して資産寿命を延ばすことは行いつつも運用に頼る選択はしないと判断しました。そのため、支出を減らしたくない加代さんの意向を考え、収入を増やす対策を優先しました。