深夜の実家で父と再会
夜遅く、茉莉たちは実家の玄関に立った。
意外にも母がすぐに出てきた。だが目の下が赤く、髪も少し乱れている。
「来てくれて……ありがとう」
「お父さんは?」
「病院から戻ったところ。頭を打って検査したけど、大きな異常はないって。出血も少ないって言われた。今日は家で安静。明日もう一度、様子を見てって。ごめん、連絡するって言ったのに……私、さっきまで何も考えられなかった」
母は言いながら、玄関のたたきに手をついた。茉莉は母の肩に手を置き、「大丈夫」とだけ言って居間へ向かった。
「お父さん……?」
居間には布団が敷かれ、父が横になっていた。額に小さなガーゼが貼られている。枕元には眼鏡が畳まれ、いつもの湯飲みが伏せてある。茉莉が近づくと、父は薄く目を開け、気まずそうに笑った。
「……大げさだな」
「大げさでもいいよ。大事にならなくてよかった……」
茉莉は布団の端を握り、言葉をそれ以上足せなかった。父の顔色を確かめるだけで、胸が詰まる。真美が遅れて近づき、父の顔を覗き込む。
「……おじいちゃん痛い?」
父は短く「もう平気だ」と答えた。真美は頷き、布団の端をそっと整えた。茉莉はその指先を見て、少しだけ目が潤んだ。台所で母が急須を出しているのに気づき、湯飲みを並べていると、洋平が近づき、小さな声で言った。
「……悪かった。俺、軽く見てた」
言い訳は続かなかった。
茉莉は手を止め、急須の持ち手を指で押さえる。怒りは完全に消えたわけではなかったが、いまはそれを表に出したくなかった。
「……話はあとで。今は、お父さんを優先してほしい」
洋平は黙って頷いた。
