義父母の後押し

「洋平! 何をのんきなこと言ってるんだ! 茉莉さんのお父さんが救急外来なんだぞ⁉ 今は金だの疲れるだの言ってる場合じゃない!」

義母も間髪入れずに言う。

「そうよ! 茉莉ちゃんが向かいたいって言ってるの! あなた、夫でしょう⁉ まず動く! 話はそのあと!」

洋平は言葉を失って口を閉じた。

義母は真美の方を向き、きっぱりと言った。

「真美ちゃんも準備して。今から向こうのおばあちゃん家に向かうよ。上着、着られる?」

真美は一拍置いて「……うん」と返事をし、受け取った上着に腕を通した。不安そうな顔の真美が自分からバッグを持ち上げたのを見て、茉莉は胸が痛んだ。

そうこうしているうちに義母は、手早く航空会社のサイトを開き、「今夜の便、空席ある」と短く言った。洋平に搭乗者情報を聞きながら手配を進めていく。旅行慣れしているせいか、さすがの手際だった。

「とりあえず3人分席は取った。あとは落ち着いて」

空港までの車内で、義母は茉莉の荷物を膝に載せ、「保険証、ある? 充電器は? 薬は?」と確認した。茉莉は頷くしかない。ありがたさと焦りが混ざり、喉が詰まる。

義父は信号待ちのたびにルートを確認し、時間だけを見ている。空港では義母がチェックインの手順を先に進め、義父が荷物を預ける列へ案内した。保安検査の手前で義母が茉莉の腕を軽くつかむ。

「着いたら連絡して。何かあったら、遠慮しないで言うのよ。いい?」

義父も「お前がしっかりするんだぞ」と洋平を睨んだ。洋平は「わかった」と短く返し、茉莉は頭を下げた。ありがとうございます、と言うと涙が出そうで、声にならなかった。