遊びに来た娘と孫

土曜日の昼下がり、インターホンの音が鳴った。

「はーい」

エプロンの手を拭きながら玄関を開けると、娘の静香が立っていた。その後ろに、すっかり背の伸びた孫たちと、荷物を抱えた婿の姿も見える。

「お母さん、来たよ」

「まあまあ、よく来たわねえ」

静香は子どもたちに「靴揃えて」と声をかけつつ、ちらりと家の中を見回した。

「あなた、荷物そこ置いて。ほら、あんたたちはこっち。おじいちゃんに、お線香あげて」

仏間へ4人を案内してから、愛子は台所に戻る。来客用の湯呑みを出しかけてリビングに置きっぱなしのパンフレットを思い出した。

「あ……」

テーブルの上には、大学から届いた分厚いパンフレットが数冊。その端に、ビデオカメラと、開きっぱなしの映画ノート。リモコンと新聞と一緒に、ごちゃごちゃと重なっている。片づけようと手を伸ばしかけたところで、ふすまが開いた。

「お母さん、仏壇のお花、換えたほうがいいかも。ちょっと――」

静香の声が途中で止まる。視線がテーブルの上に落ち、そのまま固まった。

「……何これ」その一言で、愛子の背筋に冷たいものが走る。

「これって、大学のパンフ?」

静香が1冊を手に取り、表紙をまじまじと見つめる。

「映像文化学科……シニア入試……?お母さん?」

「ちょっと、あんまりじっくり見ないでよ。片づける前だったの」

笑ってごまかそうとした声が、自分でも分かるほど上ずっていた。静香はページをぱらぱらとめくりながら、カメラとノートに目をやる。

「このカメラも、お母さんの?」

「ええ、まあ。その……ちょっと、ね」

孫が「おばあちゃん、これ何撮るの?」と覗き込む。愛子は頭を撫でて、「あとで一緒に撮ってみましょうね」と答えた。婿が「俺、車から残りの荷物取ってくるよ」と言って廊下に出ていき、孫たちもつられて玄関のほうへ走っていく。リビングには、愛子と静香だけが残った。

「お母さん」