変わり果てた妻と息子

テレビが消え、台座が白い布で覆われ、小さな器がいくつも並んでいた。水の入ったグラス、乾いた葉の束、丸い石。中央には光を返す板のようなものが立ち、うっすらと自分の顔が映る。視線を移すと、部屋の隅に土がこんもりと盛られていた。鉢でもない不思議な形の器。植え替えの途中というには、妙に形が整いすぎている。

「……千賀子」

思ったより低い声が出る。千賀子は恵太の視線の先にある器をちらっと見て確かめ、すぐにこちらへ目を戻した。顔色は変わらない。まるで、そこにあるのが当然だと言うように。

「長旅、お疲れさま。手、洗ってきて。もうすぐご飯できるから」

恵太が訊ねたかったのは、そのことではない。

豹変したリビングのことだ。

しかし千賀子はその話題に触れず、台所へ戻っていった。

   ◇

しばらくすると廊下の奥でドアが開き、息子の大智が顔だけ出した。

高校1年生の16歳。前に会ったときよりずいぶんと背が伸び、胸板も少し厚い。息子の成長に驚きと喜びが湧き上がる。

が、感情が追いつく前に、大智の冷めた声が響いた。

「……帰ったんだ」

「ああ、さっき帰ったよ。久しぶりだな」

「ふうん」

数年ぶりに会う息子は、それだけ言って引っ込んだ。恵太は浮かべかけた笑顔をしまうタイミングを失い、玄関を振り返る。

「はは、あいつも16だもんな」

反抗期ならこんなものだろう。そう結論をつけ、恵太は足早に手洗い場へ向かった。