緊張の義実家到着

仕事納めが無事に済んだ12月の末に、美月と孝は久しぶりに2人揃って義実家に帰省した。

インターフォンを押すと義父の達之が笑顔で出迎えてくれた。

「おお、久しぶりだな。早く中に入りなさい」

美月は達之に頭を下げた。

「お久しぶりです」

「ああ、美月さんもよく来てくれた。わざわざ遠いところまでありがとうね」

頬を緩める達之に美月は安堵する。達之はお歳暮の件を怒ってはいないらしい。

「あ、あの、お義母さんは……?」

「今ね買い出しに行ってるんだよ。洋平の運転でね。夜は久しぶりに家族が揃ったからな、豪華にやるつもりだよ」

洋平とは結婚をして義実家の近くに住んでいる孝の兄のことだ。

達之の説明で加代がこの場にいないことに胸をなで下ろしつつも、単に気まずい状況が先延ばしになっただけに過ぎない。美月は脱いだ靴を揃えながら、加代と仲直りするために来たのだと自分に言い聞かせた。

居間に通された美月たちはこたつに入りながらお互いの近況報告をしあった。

達之は70歳とは思えないほど元気で肌つやもよく見える。こちらがお気遣いなくと止めるのを聞かずに、お茶やお菓子を出してくれる動きは機敏で、痛風で足を痛めているようには到底思えない。

会話が盛り上がっているところに、やがて近づいてくる車のエンジン音が聞こえた。

「お、みんな帰ってきたかな」

美月は身を引き締めた。そしていの一番にこたつから出て玄関に向かった。

玄関が開き、入ってきたのはビニール袋を持った義姉の里美だった。

「あら、美月ちゃんに孝くん、久しぶりねえ」

里美は自分と同じ嫁入りした立場なので一番気兼ねなく話せる存在だった。

「お義姉さん、お久しぶりです」

その後に洋平と加代が一緒に玄関に入ってきた。

「お久しぶりです」

美月はできるだけ笑顔を作って加代と洋平に挨拶をした。

「うん、久しぶりだね。それじゃあちょっと夜ご飯の準備をしましょうかね」

加代の言葉に里美が頷き、荷物を持って台所へと向かっていく。