岳人の後悔と反省
翌朝、岳人の着替えなどを持ってきた裕子は岳人と話をすることになった。
「……裕子」
目を覚ました岳人は細い声で名前を呼んだ。
「無事に手術が成功して良かったわね」
岳人は天井を眺めながらそうだな、と呟く。
「1週間は入院が必要だって。それで退院してからもしばらくは松葉杖が必要で、リハビリもしっかりやらないといけないみたいよ」
「……そうか。それは大変そうだな」
ぼんやりとした返しをする岳人に裕子はきつい視線を向ける。
「まったく、無茶をするから……!」
「……悪かったな。心配かけて」
「本当よ……! 事故に遭ったって聞いたときはもう頭が真っ白になったんだから。あなたは昔からそうやってすぐに調子に乗るところがあるから……!」
「そう言えば博は?」
「手術が終わる前に帰ってもらったわ。あの人が救急車を呼んでくれたり私に電話をかけてくれたりしたのよ。あとでちゃんと感謝を言っておいてよね」
岳人はそこで大きく息を吐き出す。
「……アイツの忠告をちゃんと聞いておけばな。博は俺に無茶するなって止めてくれたんだ」
「でしょうね。何かそんな感じだと思ったわ」
岳人の言葉を聞き、自分の予想が間違っていなかったと確信をした。
「……お金、メチャクチャかかるんだよな?」
「ええ。もちろんよ。手術に入院費用、それからリハビリ代とか色々とお金はかかるわ。それに仕事だってお休みしないといけなくなるし。収入だって減る。本当に大打撃よ」
裕子がそう言うと岳人はゆっくりと頭を下げた。
「……ごめん。余計なお金を使わせちゃって」
裕子は岳人の頭頂部に苦言を呈す。
「私はほどほどにしておくようにって言ったはずよ。それなのに私の言いつけを守らないからこんなことになるんだからね」
「ああ、本当にそうだな」
思った以上に沈んでいる感じがしたので裕子はそれ以上責めるようなことはしなかった。