<前編のあらすじ>
美奈子は、夫の小遣いを使い込んで防災グッズを買い漁る義母に頭を悩ませていた。日に日に物が増えていったある日、ついに嫁姑の激しい言い争いにまで発展してしまう。
家族のためと称して暴走する義母と、家計を守ろうとする美奈子の対立は激化。夫と協力し、義母への金銭援助を止めることに成功した美奈子は、これで問題が解決するだろうと安堵する。
しかし、ある日、美奈子は通帳に身に覚えのない引き落とし記録が頻繁にあることに気づき、愕然とする。義母はついに、家族のお金にまで手を出していたのだった。
●【前編】防災グッズを買い漁る義母の行動は異常? 泥沼嫁姑の対立の末に姑がまさかの行動に!
嫁のお金を使い込んだ姑と対峙
美奈子は卓夫に口座から勝手にお金が引き出された事実を伝え、息子たちが寝静まった夜に喜代と3人で話し合いの場を設けた。美奈子が醸し出す怒りのためか、喜代はすでに何のための話し合いか察しがついているらしく、気まずそうにダイニングチェアに座っている。
「別に母さんを疑ってるわけじゃなくて、ただ確認したいだけなんだけど、家族の預金から身に覚えのないお金が下ろされてたんだ。俺でも、美奈子でもないんだけど、母さん何か知らないかな?」
卓夫はゆっくりとした口調で諭すように尋ねる。
「なによ。私を疑ってるの?」
「違うよ。そうじゃないって。ただ確認したいんだ」
しらばっくれようとする喜代の態度に、美奈子が思わず問い詰める。
「お義母さんが棚に入れておいた家族カードを使って勝手にお金を下ろしたんですよね?」
棚の中には通帳、印鑑、そして家族用のキャッシュカードをしまっていた。基本的には通帳の管理をしているのが美奈子で、卓夫はクレジットカードか、美奈子から渡された現金を使うので自分でお金を下ろすことはない。
「言い逃れしようとするなら、警察に連絡しますよ? 家族間でも、立派な犯罪ですから」
美奈子が怒りに任せて出した「警察」という単語に観念したのか、喜代は自分がお金を下ろし、防災用品を買ったことをしぶしぶと認めた。
卓夫は大きく息を吐き出す。
「暗証番号、どうやって知ったんだよ?」
「……前に2人が話をしてるのを聞いたのよ」
「何を買ったんですか?」
「……ポータブル電源を。あとは賞味期限が近づいていたから缶詰と非常食を少し」
卓夫は頭を抱える。
「そんなの今は必要ないだろ……!」
「だって安かったのよ。普段なら10万はするのに半額だったし。いざってときに電気がないとどうしようもないでしょ!」
美奈子は顔を赤くして叫ぶ喜代に冷たい目を向けた。
「だとしても相談をしてくださいよ。お義母さんのやったことは窃盗ですよ。逮捕されるようなことなんですよ」
「なんてことを言うのよ⁉ 相談したって、どうせあなたたちは了承してくれないじゃない!」
「だから勝手に買ったんですか⁉ そんなの何の言い訳にもなってませんからね!」
「私は家族を守るためにやったのよ!」
「2人とも落ち着いて」
卓夫が間に入ってなだめたものの、話は平行線だった。美奈子の言い分は何一つとして間違っていないはずなのに、喜代は絶対に謝らなかった。
つけっぱなしになっていたテレビでは天気予報が流れていて、アナウンサーが九州の南に発生した大型台風への警戒を呼びかけていた。