消えていたマッチングアプリのアカウント

翌朝、マッチングアプリを開くと悟のアカウントは消えていた。

美弥子のことをブロックしたのかもしれないし、本当にアカウントを消したのかもしれないが、詳細を確かめる術はない。

だが、美弥子にはひとつだけ、確信していることがある。

悟のプロフィルはうそだった。年収も会員制のレストランも高級外車もタワマンも、きっとすべて悟が作り上げたうそだったに違いない。

あの男は一体何をしたかったのだろうか。もし仮に美弥子がこの狭い部屋に引っ越してくることを了承したとして、一緒に暮らし始めたなら仕事や年収を偽り続けることはできないように思う。いずれバレるうそを吐き続けることに一体どんな意味があったのだろうか。

冷静になって考えてみると、美弥子はゾッとした。

結婚生活にお金は大切だ。でもそれ以前に、人としての誠実さはもっと大切だ。そんな当たり前のことに気づけないくらい視野が狭まっていたことに、美弥子は急に恥ずかしくなった。

きっと佳織が聞いたら面白がるだろうなと思いながら、出勤の準備を始めた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。