妹に負い目があり、父の提案に「ノー」とは言えない

今年77歳になる父は、区役所の職員として60歳の定年まで勤め上げました。亡くなった母はパートをしていた時期もありますが、基本的には専業主婦でした。そして、子供は私と1歳下の妹の2人です。

私は北海道の大学を卒業した後に現地で就職し、以降はずっと札幌です。地元の女性と結婚し、高校生の息子と中学生の娘がいます。一方、妹は就活に失敗し、実家住まいのままフリーランスの添乗員をしています。

亡くなった母はコロナ禍で脳梗塞に倒れたのですが、その頃、妹は仕事がほぼ開店休業状態だったこともあり、病院や施設探しに奔走してくれました。

私や妻は医療従事者ではありませんが広義のエッセンシャルワーカーで、特に母が倒れた時は都道府県をまたいだ移動が自由にできない状態だったこともあり、母のことは妹に任せるしかありませんでした。

母は気さくでフットワークが軽く、子供たちが生まれた時や幼い頃にはよく我が家に泊りがけで手伝いにきてくれました。下町育ちの母とちゃきちゃきした道産子の妻とはウマが合ったようで、離れていても頻繁に電話やメールのやり取りを続けていました。それだけに、私たち夫婦には忸怩たる思いがありました。

そういうわけで妹には負い目があり、父が、時価1億円を超える実家を妹に相続させ、その相続税などを払った残りの財産をきょうだいで折半するという提案をしてきた時も、きっぱり「ノー」とは言えなかったのです。

父の財産は他に預貯金が2500万円と生命保険が2000万円。よくよく考えれば私の取り分はせいぜい2000万円で、妹の7分の1にも満たない“ワンサイド相続”だったのですが。

しかし、父が「大介がそれでいいと言ってくれるなら、今の内容で遺言を書こうと思っているんだけど」と最終通告をしようとしたその時、思わぬところから横やりが入りました。