“カサンドラ症候群”は年金請求の理由になる?

舞さんが言うカサンドラ症候群とは、配偶者や家族に発達障害がある、または発達障害の疑いがあることにより、意思の疎通や関係性を築けないストレスから不安や抑うつ症状が起きている状態をいいます。

発達障害は生まれつきの脳の障害とされており、コミュニケーションや対人関係が苦手な自閉スペクトラム症(ASD)、落ち着きがなく不注意やミスを何度も繰り返してしまう注意欠如多動症(ADHD)などがあります。

発達障害による症状の表れ方は個々人で異なり、日常生活や仕事に大きな支障が出てしまう重度のケースもあれば、本人も気が付かないくらい軽度で何とか社会に溶け込んでいるケースまで幅広くあります。

これを舞さんのケースに当てはめると、発達障害の疑いがある夫が原因で舞さんはうつ状態になってしまったのではないか、ということです。

母親の質問に筆者は次のように答えました。

「お話を伺う限り、確かにお嬢様はカサンドラ症候群なのかもしれません。ただし、カサンドラ症候群は一般名称のようなもので正式な病名ではありません。よって、お嬢様はうつ病で障害厚生年金を請求することになります」

「そうなのですね。それで長女は障害厚生年金を受給できそうでしょうか」

「障害厚生年金が受給できるかどうかは、主に医師の作成する診断書とご本人または代理人が作成する病歴・就労状況等申立書の記載内容で判断されます。具体的には『日常生活や就労がどの程度困難なのか?』ということを総合的に見て判断されます」

これを聞いた母親は険しい表情になりました。

「長女は比較的調子のよいときは家事を手伝ったり買い物に行ったりすることもあります。それでも大丈夫なのでしょうか?」

「結論から言いますと、お嬢様が障害厚生年金を受給できるかどうかは実際に請求してみないと分かりません。なお、障害厚生年金は1級から3級があり、3級が最も障害状態が軽い場合です。日本年金機構によると、障害厚生年金の3級相当とは次のようになっています」

「労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します」

出所:日本年金機構「障害年金ガイド」
(補足)障害厚生年金の3級に該当した場合、月額換算で5万1983円になります(2025年度の金額 最低保障額として)