収まらない妻の怒り…失われた4000万円の穴埋めをどうすべきか

妻が兄一家との待遇の差を気にする背景には、義姉への複雑な感情もあるようです。

義姉の実家は都内で医療機器の会社を経営していて、兄が支店に勤務していた頃の上顧客でした。兄は義姉の父親からいたく気に入られ、それまでほとんど面識のなかった義姉と結婚したのです。そうした経緯があり、父も亡くなった母も姉にはどこか遠慮がちでした。

しかし、義姉自身はうちの兄よりもずっと気さくで社交的な性格です。息子のこともかわいがってくれ、毎年の誕生日プレゼントに加えて旅先からも珍しい食べ物などを送って寄越します。息子は喜んでいましたが、妻はその度に「お返しが大変」と顔をしかめていました。

茶道の師範で多くの生徒さんを抱える義姉と妻では住む世界が違うせいか話も噛み合わないらしく、義姉に対して一方的にコンプレックスを抱えているように思えます。

それはともかくとして、兄は銀行員で高給取り、義姉は裕福な家庭のお嬢さま。そんな兄一家に渡すお金があるのなら、うちの家計を助けてほしいというのが妻の言い分です。そして、私に甲斐性がないだけでなく、甥と息子の扱いの差についても何一つ意見ができないから、父がこういう決断を下すに至ったのだと私を責めたのです。

これには閉口しました。けれど、振り返れば我が家の家計はほぼ妻に任せきりで、危機的な状況をよく知る妻の方が将来不安はより切実で深刻でしょう。

妻の実家は地方でコンビニ的なよろずやを経営していますが、高齢化と人口減少で経営状態はかなり厳しいようです。私の親からの相続で我が家にまとまったお金が入ったら、多少は実家に援助をしてもらえるという期待もあったのかもしれません。

この一件があってから妻とは会話らしい会話もできず、気まずい状態が続いています。半面、仮に私が父に甥と息子の扱いの差や我が家の窮状を訴えたとしても、頑固で気難しい父が一度決めたことを覆すとはとても思えません。

飲み仲間の同僚に愚痴ったら「1000万円もらえるだけでもありがたいと思え。そもそも親の金を当てにして老後の計画を立てるなんて、いい年した大人のやることじゃない」といさめられました。そう言われても、間もなく定年までのカウントダウンが始まる中でできることなど限られています。

妻の怒りは一向に収まる気配がなく、このままでは離婚を切り出されたりしないか気が気でありません。

「最低でも5000万円」を期待していた遺産相続が1000万円になるというシビアな現実を突きつけられ、失われた4000万円の穴埋めをどうするか、頭を抱える昨今です。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。