父親から聞いた相続の話にショックを受けたワケ
そんな甘い考えに冷や水を浴びせられたのが、この正月、帰省した時のことでした。昨年母の三回忌を済ませ自分の今後を考え始めたのかもしれませんが、父がいきなり自分の相続の話を始めたのです。
驚いたのは、父の金融資産が2000万円ほどしかなかったことでした。しかも、二世帯住宅の建物は既に兄名義に書き換えてあり、父名義の実家の土地は兄に小規模宅地等の特例を使って引き継がせる、私にはその代償として1000万円を承継させる、そして、残りの1000万円は“墓守費用”として兄に管理させるというのです。
私にとっては大誤算でした。メガバンクに勤務していた父は3000万円以上の退職一時金を手にし、今も毎月30万円の年金を受け取っており、少なく見積もっても1億円近い資産があるだろうと考えていたからです。
相続人は兄と私だけですから、その半分の5000万円くらいは私がもらえるものと当てにしていました。
私は住宅関係の専門商社に勤務していますが、近年は資材の値上がり幅が大きく利益が上げづらい状況が続いています。それもあってこのインフレ下でも賃上げはほとんどなく、妻のパート収入を加えても家計は毎月火の車です。
息子の大学の学費も満足に用意してやれないほどで、住宅資金や老後資金など夢のまた夢です。それでも5000万円もらえれば、それで中古マンションでも買って、妻と2人、何とか暮らしていけるだろうと取らぬ狸の皮算用をしていたのです。
妻は父の話を聞いて私以上にショックを受けたようで、サッカー部の練習があるという息子と一緒に元日の夜には早々に実家を引き上げました。