悲観的な景気見通しと対照的な都心再開発の理由

現在の東京に目を向けると、日本の景気や生産性についての悲観的な論調をよそに、巨大な資金と資源が投入されていることがわかる。麻布台ヒルズ周辺では、地形や道路の形状から新しい街が誕生したし、八重洲から日本橋にかけては超大型の開発が進行中だ。これらが完成すれば街の景観は一変するだろう。

投入される資金は数千億円から1兆円規模とも言われ、完成した施設には多くの飲食店や高級ホテル、サービス業が入居し、景観は美しく整備され、さまざまな利便性が向上する。

人間は日常生活において、やはり徒歩圏内の環境に大きく左右されるものだ。だからこそ、再開発された地域の周辺にある住居や職場の不動産価値は大きく上昇する可能性が高い。もともとそこで不動産を所有している人は、自ら資金を投じるわけではない。いわば、他人が投じた数千億円の恩恵を「棚ぼた」で享受するようなものだ。

もちろん、今後も不動産市況には上げ下げがあるだろう。だが、都心部にはこれからも大規模な資金と資源が注がれ、それによって不動産の本源的な価値が上がり続ける流れは、変わりそうにない。