世界で近年急速に伸びてきているプライベート・クレジット

プライベート・エクイティなら新聞にもたまに出てくるし、日本にも何社か存在するのでだいたいは分かるという人は多いだろう。しかし”プライベート・クレジット”となるとどうか。

金融のプロのうち、一部の人にしか知られていないだろう。世界では資産運用の魅力的な手段、対象として、近年急速に伸びてきている分野である。何せ見込まれる運用利回りはリスクに応じ、10%超にもなるというのだ。

ここでは広義のプライベート・クレジットの中でも、狭義の”ダイレクト・レンディング・ファンド”について解説する。

さてダイレクト・レンディング・ファンドとは、その名のとおり「直接融資(ダイレクト・レンディング)してリターンを得るファンド」である。融資の対象となるのは、だいたい売上が数十億円程度の企業で、日本でいう”中小企業”よりは大きいイメージだ。

直接金融が中心とされる米国でも、中小企業向けの融資は、日本と同様で完全に銀行によって牛耳られていたマーケットだが、2008年のリーマンショックの後、急速にダイレクト・レンディング・ファンドがシェアを伸ばしている。

米国でも銀行は資金の調達コストは低い(預金で調達できるため)ものの、資本規制が厳しく要求されるROE(自己資本利益率)が高いため、中小企業向けの貸し出しにブレーキがかかった。その隙をファンドが埋めたのだ。この手のファンドは米国に200社以上存在し、40兆円以上の市場規模があると推定されている。

冒頭で運用利回りは10%超と述べたが、ダイレクト・レンディング・ファンドの特徴として、一般的に途中で換金ができないというネックがある。ではファンドの満期までの期間は何年くらいなのだろうか?

ファンドの中身を構成するダイレクト・レンディング・ローンは、およそ5~7年くらいの期間であるが、ローンの満期を待たずに期限前返済されてしまうことも多い。平均すると、ローン返済までの期間は3年くらいと言われている。

しかも、元金の一部が毎年返ってくる仕組みであることが多いので、それほど長期間資金を拘束されるわけではない(例えばプライベート・エクイティよりかなり期間は短い)。

また金利は市場の金利に合わせて上下する変動金利であることが多い(金利上昇時に有利)。以下、日本ではあまりなじみのないプライベート・クレジット/ダイレクト・レンディングの市場やリスクや特徴などについて解説していこうと思う。