不動産価値を見抜く“視点”
かつて日系の証券会社に勤めていたとき、ニューヨークの不動産投資チームに派遣されたことがある。そこでは、全米の不動産に投資(正確には証券化のための融資)を行っていたのだが、現場のアメリカ人チームヘッドが「なんだかんだ言っても、ニューヨークがいちばん手堅いと思うんだよ。新興の開発地域じゃなくてさ」と話していたのが印象に残っている。その考え方は、後の筆者の不動産に対する見方に大きな影響を与えた。
彼は続けて「ニューヨークって常に新しい開発があるよね。だから確実に伸びるんだよ」と言ったのだ。
昭和の北海道で育った筆者は、何もなかった野原のような土地が新たに開発されると、土地の価値は大化けする——そんなイメージをなんとなく持っていた。つまり、新興の開発地域が有望だと思い込んでいたわけだ。
しかし実際には、そうした新興開発地が必ずしもその後も伸び続けるわけではないし、世界中のすべてが都市化していくわけでもない。むしろ限られた大都市に開発資源が集中していく傾向が強いのだ。