後藤理奈さん(仮名)は昨年11月に実の父を亡くしました。お父様はまだ50代の若さで、幼い頃からパパっ子だった理奈さんは大きな喪失感に襲われたと言います。お父様は理奈さんの一族が経営する会社の社長でもあり、残されたお母様や理奈さん、妹の香奈さんは社業の調整にも追われました。しかし、何よりショックだったのはお父様の遺産分割協議で起きた出来事でした。社交的で目立つ存在の理奈さんとは対照的に地味で人見知りをするタイプの妹の香奈さんがいきなり、「お姉ちゃんはお父さんの生前にたくさん援助をしてもらっているのだから、私がその分多く相続するのが当たり前」と言い出したのです。予想外の展開に困惑を隠せないお母様と理奈さん……。その後の顛末を理奈さんに話してもらいました。

〈後藤理奈さんプロフィール〉
東京都在住
35歳
女性
ギャラリスト
美容外科医の夫と2人暮らし
金融資産3000万円

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父が出張先の大阪のホテルで亡くなったのは2023年の11月。都内で木枯らし1号が吹いた日のことでした。

死因は急性脳疾患で、約束の時間になっても起きてこなかった父をいぶかった部下がホテルのスタッフと客室を訪ね、ベッドに横たわる父を見つけた時には既に冷たくなっていたそうです。まだ50代でした。

父は母方の祖父が興した会社の2代目社長で、聞くところによるとかなりのワンマン経営者だったようです。主を失った会社は、それはてんてこ舞いでした。

当面は前社長の一人娘で役員でもあった母が後継社長となり、施設や社員を丸ごと引き取ってくれる買収先を見つけていくことになりました。

結果的に業務の引き継ぎや会社を回していくことが優先され、葬儀も取引先や親族、父の知人や友人など多くの方々に来ていただいたので大掛かりなものとなり、私たち家族が父の相続に向き合ったのは、それらが一段落ついた春先でした。

会社の顧問税理士さんが相続専門の税理士さんを紹介してくれて、家族で初めての遺産分割の話し合いが行われました。

相続人となるのは、母、私、妹の香奈の3人です。身内だけの相続ですし、ドラマや映画でよくある“骨肉の争い”なんて起こるわけがない……はずでした。少なくとも、母や私はそう考えて、のほほんと構えていました。

ところが、そうは問屋が卸しませんでした。妹が爆弾級のトラブルを持ち込んだからです。