USBメモリに入っていた1つの動画

父の死から1カ月ほどして、古賀さんから送られてきた書類の中にUSBメモリが入っていました。確認すると、動画が1つ保存されていました。動画に写っていたのは、かつての面影は全くない、やせこけて頬が落ち、血の気のない疲れた顔をした初老の男性でした。

肺がんの末期だけに呼吸をするのも相当苦しかったのでしょう。一言一言を絞り出すように、画面の先の私に向けて語り出しました。

「歩やお母さんには済まないことをしたと思っている。二度と会ってもらえなくて当然だ。けれど最期に、お前に子供が、私の孫がいて、幸せに暮らしていると知って本当に安心した……」

そこまで話すと父は号泣し、後は言葉が続きません。

「大丈夫ですか?」

背後から心配そうな女性の声が聞こえ、動画はぷつりと切れました。

最期まで父に会ったり、電話で声を聞いたりしなかったことに後悔はありません。しかし、私をこの世に送り出してくれた父に対し、その死にざまを見届けることができたのは良かったと思います。いつかは幼い息子にも、父の残してくれた動画を見せながら、父のことを話す時がくるかもしれません。

それも父と古賀さんとの出会いがあってこそです。プロフェッショナルな態度で父の人生の最期に寄り添ってくれた古賀さんに、今はただ感謝しかありません。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。