向後高徳さん(仮名)は、千葉県で代々続く地主の家の出身です。向後さんは男ばかりの3人きょうだいの次男ですが、先代の父親が早くから自分の後継者として5歳上の兄を指名し、8年前に父が亡くなった時にはその遺言通りに全財産を兄が承継しました。

しかし、その兄が3年前に急死してしまったことで歯車が狂い始めます。向後さんによれば、すべての元凶は、兄の相続に際して認知症の母親に成年後見人をつけたことだと言います。後見人は“唯一の相続人”である母親への全財産の譲渡を主張したのです。

「全部タラレバになってしまうけれど、兄がもっと長生きしてくれれば、兄に奥さんや子供がいれば、母が認知症になっていなければ……こんなことにはならなかった」とうなだれる向後さんに、父親や兄の相続と家族の現在の状況について話してもらいました。

〈向後高徳さんプロフィール〉

千葉県在住
58歳
男性
工務店役員
妻、社会人の長男、妻の両親と5人暮らし
金融資産2000万円

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私は男ばかりの3人きょうだいの次男として生まれました。兄は5歳上、弟は2歳下です。

生家は地方の地主で、先祖代々、不動産賃貸業を生業(なりわい)にしてきました。以前は小作人に農地を貸していたそうですが、今は市街地開発が進み、事業者や個人への賃貸が中心になっています。