通夜・葬儀でも揉めるきょうだい
母親の死後、葬儀についてきょうだい全員で話し合い始めると、「コロナ禍だから、家族葬でこじんまりとしよう」ということは全会一致。
次兄は、
「コロナだから実家にお坊さん呼んで、俺たち子どもだけで済ませればいいと思う」
と言い、姉は、
「お通夜とお葬式を一緒に一回で済ますことも多いみたいだね。白装束はどうする? 最近は本人のお気に入りだった服を着せるというのも多いみたいだよ。その方が安いし」
とお金も労力もかけない方へ誘導する。
「母は、父が亡くなった時に、父の預金口座が使えなくなって困った経験があったため、自分が逝った後のことを考え、急なお葬式でもスムーズに子どもたちが動けるように、貸金庫に十分お葬式ができる額を準備して、そのカギを次兄に預けていました。つまり、母はきちんとした葬儀を望んでいるにもかかわらず、次兄はカギを預かった時にそれを聞いているはずなのに、簡素な方に誘導していました」
片岡さんは、「私の小学校の参観日にも着物で来ていたような着物好きなお母ちゃんだもの、洋服は嫌でしょう?」とか、「お母ちゃんは、孫にもひ孫にも来てもらったら嬉しいはず」などと発言するが、次兄と姉は一向に耳を貸さない。
そこへ、母親の7歳下の妹が花束を持ってやってきた。
すると、片岡さんの
「やっぱり、お母ちゃんはお通夜とお葬式と両方してほしいと思うよ」
「白装束を着たいと思うよ」
との発言に、叔母は「うんうん」と大きく頷いている。
たちまち場の空気は入れ替わり、次兄と姉は片岡さんの意見を聞き入れた。