契約解除に使える「強力な解決策」とは?
美奈さんを紹介してから会合に至るまで数日かかったが、対面時の美奈さんは意外にも落ち着いていた。
挨拶もそこそこに本題に入る。私はすぐに「内容証明で送りましょう」と打診した。
内容証明とは内容証明郵便だ。内容証明郵便なら、いつ、どんな内容の文章を、誰が誰宛てに送ったのかを郵便局が証明してくれる。これは強力だ。「送った」「送っていない」といったトラブルだけでなく内容についてまで証明されるため、送られてきた側は受け取った書類について曖昧にできない。
内容証明郵便はお金の貸し借りにおいて返済を促す際によく用いられるが契約の解除についても十分利用できる。特にクーリングオフにおける効果は高い。
普通郵便や書留程度では無視を決め込む事業者であっても、内容証明郵便で送った途端、手のひらを返したように契約解除の返金に応じる事業者も多い。このことを当事務所の事例をもとに美奈さんに説明し、費用についても今回のケースなら1万円程度で可能であることを補足した。
「それなら安心です!」と美奈さんは大いに喜んだ。だが一抹の不安を私に伝える。
「あ、でも……もうクーリングオフの期限の8日をとっくに過ぎてしまっているんです」
クーリングオフは書類の発送時に効果を生じる
美奈さんの言う期限への心配は正直なところ全く問題はない。なぜなら、クーリングオフは発送時に効果を生じるからだ。美奈さんは契約から3日後には書面を送付している。書留の形でも送っているため書類を送ったという事実は明らかだ。
私は発送時にクーリングオフの効果が生じていることを説明する。そして、あくまでも今回は相手方にクーリングオフの効果が発生していることを理解させるために強力な内容証明郵便で説得するようなものだとも付け加えた。
私の説明を聞いて美奈さんは安堵(あんど)し涙を流した。
「よかったです……これで安心できる」
早速その日に文面を作成し、美奈さんの確認を経て堤氏宛てに送付した。