<前編のあらすじ>

真希は(34歳)は、30歳を過ぎてから婚活パーティーで知り合った敦志(35歳)と結婚した。プライベートも仕事も順風満帆な日々を送っていたが、敦志の母・吉江(62歳)が要介護になったことをきっかけに、頻繁に義実家へ足を運び介護をすることになった。しかし真希は、何かと棘のある物言いをしてくる吉江が苦手だった。

近所の人たちとは円満な吉江だったが、真希への小言は相変わらず。気乗りはしないが、女手一つで敦志を育てた吉江が自分の亡き母と重なる部分もあり、夫とともに義実家へ足を運んでいた。

ある日、義実家の近所の住民が、真希がキャバクラで働いているとうわさをしている現場に居合わせてしまう。困惑しながらも問いただすと、吉江が言っていたのだと知らされる。

●前編:「私がキャバ嬢⁉」嫁の“根も葉もない噂”をご近所に流す義母…理不尽な意地悪を続ける“まさか過ぎる”理由

信じられない義母の言葉

「どういうつもりですか? 私はお菓子メーカーで働いてるって話しましたよね?」

義実家の扉を勢いよく開けた真希はリビングに吉江の姿を見つけるや、鋭い声を吉江へと向けた。吉江はいきなりのことに面を食らったようで、目を丸くしたまま真希を見上げていたが、ようやく理解が追いついたらしく口を開いた。

「な、何を言ってんのよ。わけが分からないわ……」

「さっき、近所の人に私がキャバクラで働いてるって言われました。問い詰めたら、お義母(かあ)さんから聞いたっておっしゃってましたよ。どういうことですか? 説明してください」

吉江は目線を左右に動かしながら、言い訳をする。

「そんなこと言ってないよ。その人が何か勘違いをしただろうさ」

「どういう勘違いですか? 溝口さんははっきり、お義母(かあ)さんから聞いたって言ってましたよ。しかもあの様子だと最近聞いたって感じじゃないです。ずっと前から知ってたみたいな口ぶりでしたけど」

「だから、知らないって言ってるだろ! だいたいね、旦那よりも稼ぎがいいことを自慢するような態度とって、派手な格好しているほうが悪いと思うけどね。勘違いされたって仕方ないだろうよ」

真希は冷静さを心掛け、いら立ちを抑えながら問いただしたが、吉江はとにかく事実を認めようとしなかった。それどころかこの言い草だ。真希は思わず頭を抱えた。

「いつの時代の人なんだか……女がお金を稼ぐことがそんなにいけませんか? そんな古臭い考え方してるの、お義母(かあ)さんだけですよ」

「今度は年寄りをばかにすんのかい! 信じられないね、まったく。息子よりも少し稼ぎがいいからって偉そうにするんじゃないよ!」

「……なっ、私がいつ偉そうにしたって言うんですか!」

「いつだってしてるだろう。妻っていうのはね、旦那を立てるもんなんだ!」

もう何を言っても無駄だと思った。真希と吉江では生きてきた時代も、見えている景色も何もかも違った。