父親としての「振る舞い」に悩む
「いくらなんでもあれはさすがに怒鳴りすぎだよ」
夜の寝室でほなみがため息を吐くように言った。
「ウソを吐くからいけないんだ」
「まあそうかもだけど」
突き放すように言った真司に、ほなみはもう一度ため息を吐いた。
「でもさ、怒鳴ったことはちゃんと謝りなよ? このままだと、亮介、パパとしゃべってくれなくなるよ」
分かっていた。他でもないかつての自分がそうだったのだ。
だとしても、どう接するのが正解なのかが分からない。真司にとっての父親とは恐怖の権化である真幸に他ならず、子供に対してどう振る舞う父親が正しいのかを知らなかった。
「明日、謝るよ」
「うん。大丈夫だよ」
謝るための足がかりすらないままに言った真司に、ほなみはうなずいた。ベッドに入ったほなみが手を伸ばし、ベッドサイドの明かりを消す。
暗闇のなかで、真司は謝り方を考えて唇をかむ。